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助けて!から助け手へ!!

「ゆっこ XP」への出発(たびだち)

「パソボラ・カンファレンス2001」を期して発行の
『障害者と家族のためのインターネット入門』
Web版バージョン

2001年11月17日 更新

 坂戸パソボラは、と言われても、坂戸?どこなのそれ?ですよね。埼玉県の真ん中あたり。川越の先のほうにあるのが坂戸です。その坂戸のあたりでパソボラをやっているのが、坂戸パソボラです。

 メンバーの大半は坂戸に住んでいますが、お隣の川越や鶴ヶ島に住んでいる人、坂戸に通っている人、坂戸に住んでいた人、パソボラに関心のある人、パソボラを応援したい人と様々です。パソボラとしてサポートに参加したい人だけではなく、サポートを受けたい人も参加しています。

 パソボラ参加の問い合わせでは、話しているうちにだんだん「私は初心者だから…」とためらう人が少なくありません。それはパソボラですからパソコンに強い人がいるのは当然ですが、でも、最初は誰でも初心者!パソコンの知識ならパソボラをする中で増えていくものですし、現にパソコンでは初心者でも他のことならと活躍しているメンバーが大勢います。できることをする、パソコンのことでなくても。それもまた坂戸パソボラです。

 パソボラとは、パソコンとボランティアとでパソコンボランティア。パソコンをやってきた中でボランティアに参加する人、ボランティアをしている中からパソコンを始める人と様々です。ことに、ボランティアをしている中から参加した人は、パソコンは初心者でもボランティアに関しては長年の経験者です。こういったボランティアグループがあったからこそ、今の私たちもパソコンを用いた応援ができるのです。

 パソボラは、パソコンという今時の道具を用いているという意味では時代の先端にいますが、ボランティアとしては生まれたばかり、まだまだ初心者です。ボランティアに関しては、これまでボランティアをしていた人たちこそがパソボラのサポーターなのです。だから、むしろ教えてください、と、参加を呼びかけています。

 ところで、サポートに出かけると「お礼はいかほどでしょうか…」と聞かれることがよくあります。そうか。ということは、ここではボランティアさんとは“お支払い”があるのが当たり前だったんだなぁ。人それぞれ、グループそれぞれではあるけれど、ウーンと思ったものでした。で、そんなときにはこう答えているのです。

「誰かから助けてほしいという声があって、それが助けられることだったら、今度は助けてあげてください。お礼はその人に返してくださいね」と。

そして、こう続けます。

「たとえば、同じような障害をもった人が訪ねてきたとして、そのとき○○さんがパソコンを実際にやっているのを見れば、私にもできるかもしれないとその人も思えるでしょ。○○さんがパソコンをやれるようになること自体が訪ねてきた人に勇気を与えるのです。その人に、パソコンのことで困ったときには坂戸パソボラに相談することも伝えてあげてください。それだけで、○○さんは立派に助け手の一員です」

 さて、坂戸パソボラでは、障害をもった人の自宅や施設を訪問してのサポートや、イベントでのパソコン体験・相談コーナーに加えて、坂戸市社協と連携を取りながら様々な障害に応じたパソコン体験講座を催しています。その中で今年3年目になるのが「視覚障害者のためのパソコン体験連続講座」です。3年目の試みとして、今回の講座では午前中に「視覚障害者のためのパソコンサポートボランティア養成講座」も盛り込んでいます。

 これは、サポートしたいという気持ちはあってもどうサポートに携わればいいか分からない人たちをも育てようというもので、午前中の「養成講座」で学んだことを午後の「体験講座」でのサポートに参加することで、サポート体験を積んでもらっています。もちろん、いきなり一人でサポート!ではなくて、ベテランのサポーターさんとコンビを組んでサポートするという、パソボラのサポートでの望ましいサポート形態である“複数サポート制”を取っています。ベテランのサポーターさんにとっても、新しいサポーターを落ち着いて育てることのできる良い機会となっています。

 そして、今回の視覚講座では、去年の講座に参加して初めてパソコンをさわった「ゆっこさん」こと吉田有紀子さんが講師の一人をつとめました。

ゆっこさんたちの写真:クリックすると大きくなります

 ゆっこさんは、数年前のある日、眼底出血が発見され、「手術しないと失明する」と宣告されて手術をしたら失明した方です。それが去年の秋に、友人の祐子さん(パソコンに強い)とお喋りをしている中で「メール、音声で出来るらしいよ」と言われ、そっか、その手があったかとトキメイタまさにその翌日、伯母の裕子さんからパソコン講座開催の知らせ。すごいタイミング!と、参加したのが、初めてのパソコン体験でした。

 講座に参加したことで自分にも使えることが実感となったのでしょう。パソコンを購入し坂戸パソボラが自宅を訪れてのサポートをする中で、自宅でも練習が出来るようになりました。家にあったワープロではちょっとさわって人差し指で打つくらいだったというゆっこさんですが、2週間で見ないで(そりゃそーです)入力し、メールを楽しむようになりました。「元々覚えがいいから、とかじゃなくて、ブラインドタッチじゃないと使えないから」とアッケラカンと笑うゆっこさんです。

 ゆっこさんのサポートのため情報を交換し合い連絡を取り合う中で、パソコンに強い祐子さんがパソボラに入会。そして、拡大写本の会に参加していた伯母の裕子さんも、「ゆっこのサポートができるようになりたい」とパソボラにも入会しました。

 では、ゆっこさんはどうだったでしょう。ほかのことではバイタリティーにあふれ(イキイキが美しい)ゆっこさんでしたが、パソボラに入会することについてはずっと慎重でした。

 ゆっこさんが坂戸パソボラのメール会員になって数か月。

どう、坂戸パソボラの様子、わかってきた?

だいたい。

で、どう?

私が参加しても何もできないし…。

そんなことないよ。
たとえば、ゆっこさんは音声でパソコンを使っているわけじゃない。
そうすると、普段そんな環境でパソコンを使っていない人でも、
電話の向こうでゆっこさんに教えてもらえば、
サポートできるかもしれないじゃない。
そんなとき電話で助けてもらってもいい?

はい

これで、ゆっこさんも“在宅ボランティア”できるね(笑)

(笑い)

それと、また今年も視覚講座やるんだけど

わー、また受けてもいいんですか!

うんにゃ、今度はゆっこさんにサポーターのほうをしてほしいんだ。

えっ、私がですか?

そう。ゆっこさん、パソコン買って2週間で出来るようになったよね。
これからパソコンを始める人にとっては
それだけで勇気と希望の生きている見本だよ。

えー、照れるなぁ。

それにまだまだ初心者だった頃の気持ちを忘れていないと思うし。

まだまだ初心者ですよぉ。

ならサポーター最適だー(笑)

・・・そうか、それなら私にもできるかな。
私はこうやって覚えましたというのを紹介するくらいならできそうだし。
なら入ろうかな。

 こうして入会したゆっこさん。ふっ切ったらスッキリ前進の快活な“ゆっこ力”を発揮する中で「ウエルカムチーム」の世話人に推されました。坂戸パソボラには、パソコンに慣れていないと遠慮しがちのメンバーもいるわけで、そんなとき若さだけではない、大きな水面のような広がりをもった“ゆっこ力”が大きくつつんでくれています。

 そんなゆっこさん。パソボラに参加している視覚障害者たちを知る中で、私も自立してもっと、励ますほう、助けるほうに回りたいと思うようになりました。そして、こんなメールが、ゆっこさんからみんなに届けられました。

坂戸パソボラのみなさん、こんばんは。

吉田ゆっこです。

実はこの度、国立リハビリセンターに入所し生活訓練を受けてくる事にしました。半年程、入所する予定です。

とっても楽しい「坂戸市内での視覚障害者のためのパソコン体験講座」を、フル参加できないのは残念ですがリハセンで心身共に鍛えて「ゆっこ XP」にバージョンアップして帰ってきたいと思っていますのでまた来年も坂戸市内での講座開催、期待しています。

そして少しでも自立できた暁には岩渕さんの肩に乗った荷物を軽くできたらと思います。ねっ、岩渕さん?

かよわい私だけでは難しいようならみんなで協力してやりましょう。

しばらくはパソボラも静かで平穏無事な日々になると思いますが誰がなんといおうと、帰ってきますのでよろしくお願いします。

 「それまでも励まされたけど、入所が決まったことを報告してからのみんなの励ましが嬉しかった。ウルウル度120%だった。帰ってきたら少しは助け手に近づけるかな」と語るゆっこさん。すでに、ゆっこさんは助けられることを通じて、助けた人の中の“助ける力”を導きだし、その人の人生を励ましてたんですよ。今度は、ゆっこさんが“助ける力”を育てる番ですね!

 9月の朝、ゆっこさんは国立リハビリテーションセンターに出発していきました。助けて!から助け手へ!!「ゆっこ XP」への出発(たびだち)です。


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