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新春対談 民主党・園田康博氏と勝又和夫代表

日本障害者協議会  Japan Council on Disability

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1029日更新

「新しい年につくる新しい障害者制度への期待」
JD勝又代表、民主党園田康博衆議院議員に聞く

2009年12月18日(新年1月6日、園田議員に内容確認)
場所・第1衆議院議員会館625号室(民主・無所属応接室)

勝又代表

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。新しい年を迎え、いよいよ今年は障害者福祉にとって大事なスタートの年になると胸をふくらませているところです。

昨年の総選挙で民主党が第1党をとられ政権交代が起きました。そして問題だった障害者自立支援法について長妻厚生労働大臣が就任早々、その廃止を発表され、鳩山総理も所信表明で「廃止」を述べられました。今年はその新しい姿をどう描いていくかが大きな課題だと思います。

園田議員

新年おめでとうございます。JDの皆さんに新年早々こうして勝又代表との対談という形でお話できることに感謝申し上げます。

まさしく今年は新たな息吹が芽生える年にしていきたいと決意を新たにしています。国民の皆さん方の手で政権交代が実現、それまでの政権をもう一度点検し、そこからそのまま継続するもの、大きく見直すもの、方針を転換するもの、やめるもの、という形で、その運営も含めて中味も大きく変わっていくことを期待されているのだと思います。

鳩山総理は、弱い立場の人たちにこの世の中の主役になってもらうんだ、これまで重要視されてこなかった部分を前面に出して行こう、というのが民主党を中心とする政権の考え方なのだということをおっしゃっています。私自身もこの間、皆さん方からいろいろお話を伺いながら障害者施策に携わって参りました。その中で学んだことが二つあります。

一つには、「私たち抜きで私たちのことを決めないで!」即ちその政策立案の過程で障害をもった方々を抜きにしては立案できないのだということです。ヒアリングをするとか要望を受けるというのは、今までやってきたことではありますが、それはただ単に聞き置くということではなかったなぁと思うのです。私たちは皆さん方と一緒に作っていく、この考え方が民主党を中心とする政権にあることを身にしみて認識させていただいています。

それからもう一つの大切な点は、制度改革に、障害をもつ当事者が入るというのは当然ですが、国民の皆さん方にもきちっと説明し納得していただく、同時にそれを無理なく新たな制度に移行していくことだと思います。これまでは、新たな方針が出されてから実際にそれが動くまでの期間が近過ぎて、極めて無理な変更を余儀なくされました。それによってさまざまな歪みや負担が重くのしかかってしまい、混乱を生じさせたまま制度が移行していったと思います。新制度に移行するときは、きちっとプロセスを踏んで、皆さん方の納得をいただきながら進めていくべきだと思っています。これが、私が皆様方から学ばせていただいたことです。

障害者福祉は、国際社会の中でも、またわが国だけ見ても少しずつですが進歩を遂げてきました。しかし、全体からみて低いレベルの施策であり、これを如何にして引き上げていくのか。政権が変わり、皆さん方と一緒にやらせていただきながら劇的に引き上げる、世界に自信をもってわが国がユニバーサル社会の先進国であると宣言できるところまで頑張っていきたいと思っています。

勝又

当事者が参加して作る、当事者に新しい体制に移るときに混乱を与えないというところが大事なポイントになると思います。加えて事業者にとってもまた実際の作業を担う区市町村にとっても混乱なく新法に移行していくことが大切だと思います。区市町村や事務所で働く人のことも考慮して、新しい制度を作っていくことも大切なのではないかという思いがあります。

園田

ここのところ毎年のように自立支援法による制度が変わって、その度にシステムを変えたり計算をし直したりということが続きました。確かに早く変えて欲しいというご意見もありますが、長い目でみた時に腰をすえてこれでいくということを皆さんのコンセンサスを得た上で段階を経て直していこう、作り上げていこうと思います。その方が、先が見えてきますよね。

心づもりとしては、来年はこういう改正、再来年はこうなるという形で段階を追って先が見えるように進めていきます。突然矢継ぎ早にあわただしく出されてくるのとでは全然違うと思います。

新年度の予算編成は…

勝又

地域視点というときには、地域にはいろんな人がいらっしゃるわけで、皆さんが納得できる形で進めていかないと、これは違うのではないか、また変わるのか、というのはよくないと、この間何度も聞かされてきました。

新年度の予算編成に向けて民主党が党として、年末の12月16日に、政府に要望を出されました。その18項目の中に自立支援法関係も入れていただいた。このことが負担軽減をさらに図っていただくことにつながると大きく期待しています。

園田

今までは、障害者施策は優先順位も後の方に回されていました。私たちはソフトに重点を置く、人に重点を置く、生活そのものに重点を置く、これが基本でなければならないということです。予算もそういうところにきちっとつけるべきであるという意志をはっきり示させていただいた。引き続きこの予算に限らず今年、いろんな施策が立案され法制度として出てきて、一つひとつ仕上げていきたいと思っています。

その結果、実際に、予算もまず新たな総合的な制度ができるまでの間、低所得者については福祉サービス及び補装具に係る利用者負担を無料とするために107億円付けることになりました。これは、とても画期的なことです。

予算編成全体では、大幅な税収不足で大変困難な作業を強いられ、予想外の厳しい環境の中での予算編成となりました。決して十分とは言えないかもしれませんが、最初の予算編成としては、一歩踏み出せたと思います。引き続き、低所得者への支援策を打ち出していきます。

勝又

当初の293億円に比べて私たちとしてはすっきりしませんが、今後に託しましょう。さて、国連で1981年の国際障害者年を決議した国際障害者年行動計画(1979年)の中に、「障害者を締め出す社会は弱くてもろい社会である」という一文があります。自立支援法が成立する過程の中で、私は30年前に時代を戻されたという思いがし、このフレーズをあらためて思い返していました。

園田

おっしゃるとおりですね。同時に国連の障害者権利条約は、日本としてきちんと批准しなければいけません。昨年のある時期、あるいはわが国の障害者施策の元年になるのでは、と言い続けていました。しかし国会の情勢は実質的な審議に入ることができずに総選挙を迎えました。

あの時、与野党問わず、当時野党の私どもも与党の皆さんと一緒になって議論をきちんとしたい、国会審議を活性化させ、それを全国民の皆さんにも知っていただく機会が作れるのではないか、と思ったのですが、叶いませんでした。今年はそれを与党として主体的に話を進めていきたいと思っています。

私たちだけが主役になるのではなく、国会議員として与野党問わず批准に向けて議論をきちっとしていかねばならないと思っています。昨年、障害者週間中の12月8日に閣議決定し、障害者制度改革推進本部が総理を本部長として政府全体で取り組むことが決まりました。国会でも障害当事者はじめ家族、障害者団体の方々と一体となって議論していく、そういう年にしていきたい と思っています。

勝又

その「障がい者制度改革推進本部と改革推進会議」について、現時点でお分かりのことをお話ください。

園田

改革推進本部は、まさしく鳩山総理の強い思いが込められており、政治家主導すなわち国民主導で政策を進めていく、象徴的な場となるでしょう。また、改革推進会議は、障害当事者の方々や障害者団体が中心となって構成され、さらに、事務局長にも障害当事者で弁護士の東先生がご就任されています。

この推進会議が中核となって、改革の方向性である基本方針を作り、その基本方針に則って、各課題別の「部会」において実際に制度の骨格が作られていきます。国連権利条約の批准のためには、国内の関連法制を幅広く議論する必要があります。まずは障害者基本法の改正、差別禁止や虐待防止の法制度、そして障害者自立支援法に代わる新たな総合的な福祉制度など多岐にわたります。一部の人たちだけで議論するのではなく、障害当事者、国会議員、官僚そして国民と、皆で考えながら新たな制度を創造していきたいと思います。早速、今月から議論がスタートすると聞いておりますので、とても楽しみにしております。

私どもの要望に対する民主党・政府の対応は…

勝又

私どもJDは、政権交代直後の9月3日に鳩山民主党代表宛に「障害者自立支援法等に関する緊急要望書」を出しました。そしてJD内に自立支援法見直しに関しての特別委員会を設け、9月30日に、鳩山総理大臣宛に「障害者自立支援法の廃止とこれに伴う新法制定に関する要望書」をロードマップ案も含めて提出しました。これらに対する民主党そして政府の対応について、園田議員が現段階でお話しいただける範囲で見解をお聞かせください。

園田

皆様からいただいた緊急要望書(鳩山総理宛)については、当時まだ民主党に政策調査会が残っていましたので、政調を通じて、鳩山民主党代表のもとに届いています。要望事項については、報酬支払い(月額払い)の方式、自立支援法に代わる新法へのスケジュールと基本案に関しては、まさしくこれから推進本部の下で議論されることになります。

ただ、長妻厚生労働大臣も明言されておられますが、4年以内に新法が制定されるものと認識しておりますので、それを基準としてスケジュールが進んでいくのではないでしょうか。また、「障害者制度改革推進法」並びに「同本部の設置」に関し、設置は閣議によって実行されましたが、今後、その内容も含めて、障害当事者や団体の意見が集約される形で「推進会議」において議論が進んでいくようになりますので、緊急要望の趣旨にお応えできているのではないでしょうか。

新法制定に関する要望書とロードマップについても、具体的な提案をいただき、ありがとうございました。あくまでも私の見解ですが、新法制定までのロードマップは、残念ながらこの提案より、少しずつ後ろにずれ込む可能性があります。すなわち、たとえば障害者の範囲についてはかなりの議論が必要であり、果たしてこのスケジュール案で進むか、正直自信がありません。

もちろん、推進会議の皆様や障害者議員連盟とも協力し合いながら、早急に、かつ着実に進めていきたいと考えておりますので、日本障害者協議会の皆様のご尽力もお願いしたいと存じます。

勝又

民主党でいうと、障害者議員連盟が立ち上がっているということでしょうか。

園田

自立支援法ができたときにそれに代わる新たな制度を作っていかねばならないということで、その頃はまだ国連の障害者権利条約も国連で採択されていませんでしたから、それも念頭において障害者政策推進議員連盟を立ち上げました。それを政権交代後も継続しており新たに当選された議員も含めて、党内で最大の議員連盟になっています。

勝又

156名でしたか?

園田

はい、そうです。民主党内でも100名を超える議員連盟はそうありません。

勝又

谷博之参議院議員が会長で、園田議員は幹事長、事務局長に小宮山泰子衆議員、事務局次長を金子恵美参議員がされて、障害者問題で中心的な役割を担っておられるのですね。

園田

わが国の障害者施策全般に関わる議員連盟です。まさしく国連の障害者の権利条約批准に向けて、国内法の整備などありとあらゆる法律、基本法から差別禁止法、虐待防止法そして総合福祉法等々について、この議員連盟が中心になって党内では進めていくことになります。

園田議員の障害者問題取り組みの原点は…

勝又

是非与野党を超えて批准に向け取り組んでいただきたい。園田議員がこれほどまでに障害者問題に取り組まれる、その原点はどこにあるのでしょうか。

園田

いろいろありますが、選挙に初めて立ったときにお会いした難病の方との出会いがあると思います。私はそれまで大学で法律を教えていました。学生に、自分の言った言葉には責任を持たなければならないと教えてきました。いわゆる制度の谷間にある難病の方が、手帳が取れない、その手続きの大変なこと、ベットでの日々の暮らしに困られていることなどを聞かせていただきました。

こういう人々になんで行政は普通に対応できないのか。政治家になればやれる、とそのとき思いました。その方からやってくれますか、と言われ、いいですよ、やりましょうと答えました。おかげさまで当選し、すぐに実務的なことから始めました。そしたらいろんな問題が障害者施策にはあることがわかってきました。これは私のライフワークとして取り組むべき仕事だと思い、今日に至っています。

勝又

お子さんの頃、例えば小学生のときには何になりたかったのですか。

園田

小学生のときの文集に、ガソリンスタンドの店長になりたいと書いたようです。その時分はそんなに大きな夢を抱いていなかったんですね。私の父親は岐阜大学の研究者でしたから、成長するにつれて、父の姿を見て、研究者になるのが合っているのかなと思うようになり、研究者の道を目指しました。

もっとも私の祖父は農林水産省の役人でした。それが終わってからは、岡山大学の研究者で余生を全うしました。ですから公僕という家庭環境に染まっていたのだと思います。幼い頃から、父親からは、将来役に立つ仕事に就きなさい、一番いいのは公務員だと言われていました。私利私欲を捨て国民の奉仕者としての役目を果たすのが一番いい、それが当時、私にできるのかどうか分かりませんでしたが。今、ようやくそういう立場にならせていただいている、と思っています。

勝又

個人的なことで不躾で恐縮ですが、よく代議士になったらいつかは総理大臣になりたい、というのが一般的だといわれますが?

園田

誤解を恐れずに言わせていただくと、国会議員であることが目的ではなく、政策が作れれば、そしてその政策がきちんと動いていけばそれでよい、というのが私の思いです。

勝又

座右の銘が「真実一路」だとおっしゃられていることが納得できました。改めてこの対談を通じて園田議員のお人柄も含めて、頼りになる方であることを確認しました。

園田

今年は夜明けが近い、明るい展望を見つめながら皆さんとご一緒に歩んでまいりたいと思います。どうぞ一層のご支援ご協力をお願いいたします。

勝又

こちらこそよろしくお願いいたします。本日はご多忙な中、ありがとうございました。


園田 康博議員のプロフィール

1967(昭和42)年生まれ。岐阜県出身。'94年日大大学院法学研究科終了、'97年慶大大学院法学研究科終了。同年慶大通信教育部講師などを経て、'03年衆議院総選挙初当選、以来'05年と'09年の衆議院総選挙に当選し3期目。

現在、衆議院厚生労働委員、消費者特別委員会理事、青少年特別委員会筆頭理事、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会委員。慶大大学院非常勤講師。「障がい者制度改革推進法案」の起草者の一人。