すべての人の社会2009年2月号 No.344 表紙 新障害者基本計画&新アジア太平洋障害者の十年推進のための情報誌 2009年1月15日発行毎月1回15日発行VOL28−11 通巻NO.344 1982年11月4日第三種郵便物認可 http://keirin.jp/ http://ringring-keirin.jp/ 財団法人JKA 表紙(もくじ) P1 巻頭言 障害者差別禁止法とオーストラリアの「要コンパニオンカード」佐藤 久夫 P1 1月の活動記録 P2 視点 点字を見直す年 田中 徹二 P3 What's New! 障害連、東京都交渉を行う P4 全国障害児学級・学校学習交流集会に3日間で2千人を越える参加 P5「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律」が成立 P6 障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会ニュースC P8 JDFセミナー「障害者権利条約における合理的配慮と人権」(要約)ティナ・ミンコウィッツ P11 報告 ニュージーランド研修 富永 健太郎 連載 P12 北欧 最近障害者事情パート2 第2話 最重度の人たちと共に生きる 薗部 英夫 エッセイ パラボラアンテナ[76] P16 産科医療補償制度 花田 春兆 P14 インフォメーション 表紙3 メンタルヘルスの集い(第23回日本精神保健会議) 1ページ 巻頭言 日本障害者協議会(JD)理事 政策副委員長 佐藤 久夫 障害者差別禁止法とオーストラリアの「要コンパニオンカード」 オーストラリアのビクトリア州には介護を要す る障害者に「要コンパニオンカード」を発行し、 一人分の入場料でレクリエーション施設や公共交 通を利用できる(介護者のチケットを無料にする) 制度がある。他州にも広がりつつある。 オーストラリアでは1992年に連邦の障害者差別 禁止法が制定され、これをきっかけにスポーツ施 設、劇場、公園、遊園地などレクリエーション施 設や公共交通機関の利用に2人分の料金を払うの は不平等だとの声が障害者から上がった。施設運 営者たちはこれに応えて介護者を無料にするなど 個別対応をしてきたが、誰が真に要介護障害者な のか窓口での判断も難しかった。 このカードが交付されるのは、これら施設の利 用に際して、移動、コミュニケーション、身辺処 理、学習・計画・思考などにかなりの人的介護が 必要な障害者である。その状態に波があっても生 涯続くものである必要がある。単に安心のため、 励ましのための付き添いが必要、等は除外される。 このカードは、所定様式に本人(または後見人) が必要事項を書いて、医療や福祉の専門職が証明 の署名をし、郵送で申請され、判断され、発行さ れるものである。発行機関から確認のために関係 者がインタビューされることもある。専門職の社 会的信用という面でも注目される。 この制度を活用する事業者にとってのメリット として、企業のイメージアップ、障害者の権利保 障という社会的責務を満たす、障害者という新市 場・顧客の開拓、障害者差別としての告発の予防、 などが挙げられている。 障害者に「割引をする」時代から「平等を保障 する」時代への移行を感じる。平等な収入を就労 や年金で保障し、平等な出費で暮らせるように保 障しようと。障害にともなう余計な出費は個人や 家族の重荷にせず社会全体で背負う。こうして、 障害者を含めた全員参加となれば、経済的にも精 神的にもより豊かな社会となる、との認識を広め たい。 1 月の活動記録 13日(火) JDF差別禁止法等小委員会 10時から新宿区立障害者福祉センター 第11回理事会 16時から戸山サンライズ会議室 JD新年の集い 18時から戸山サンライズ2階大研修室 15日(木) JDF条約小委員会 10時から戸山サンライズ2階中会議室 20日(火) 広報委員会 18時からJD事務局 21日(水) 自民党障害者特別委員会「障害者基本法」ヒアリング 15時から自民党本部 22日(木) 自立支援法訴訟の勝利をめざす会事務局会議 10時15分から新宿区立障害者福祉センター 26日(月) JDF国際委員会 18時から戸山サンライズ第1会議室 28日(水) JDF幹事会 10時から戸山サンライズ2階特別会議室 29日(木) 社会支援雇用研究会 17時から新宿区立障害者福祉センター 31日(土) 情報通信委員会 18時から新大久保 えある 2ぺージ 視 点 日本障害者協議会(JD)副代表 田中 徹二 点字を見直す年 1月4日は、世界で使用されている6点式点 字を考案したルイ・ブライユの200年目に当たる 誕生日でした。彼が卒業したパリにある世界最 古の盲学校、その盲学校を1784年に設立したバ レンタン・アウイを記念したバレンタン・アウ イ協会、そして世界盲人連合(WBU)、ヨーロ ッパ盲人連合(EBU)が主催して、4日から8 日まで、ユネスコ本部で生誕200年記念国際会議 が開かれました。46カ国、約450人の視覚障害者 が集い、それに付添やボランティアで、国際会 議場はいっぱいでした。開会式ではサルコジ大 統領のメッセージが紹介されたり、パリ市長の レセプションがあるなど、国をあげての行事と いう様相を呈していました。 4日は日曜ということもあって、午前中は盲 学校のチャペルで追悼ミサがあり、フランスの 偉人が祀られているパンテオンでは、記念式典 や、ブライユの遺骨が安置されている部屋の前 で、献花が行われました。また、夜にはノート ルダム大聖堂で視覚障害の常任オルガニスト、 ジャン・ピエール・ルグアイによる記念演奏が あり、ブライユを追悼するふさわしい日となり ました。 会議では、各国点字の紹介や、点字楽譜、数 学表記、ITと点字、触る絵本、芸術と触図、ゲ ームと点字、日常生活における点字、雇用や社 会統合の場における点字などについて発表があ りました。「6点式点字とその未来」と題する会 議にふさわしく、さまざまな角度から点字を見 直す会議となりました。また、半数がフランス 語点字で往生しましたが、大量の点字資料が提 供され、さすが、という印象でした。 昨年5月に発効した国連の障害者権利条約で は、視覚障害者に対する情報提供手段として点 字が明記され、日常生活の中で「合理的配慮」の 一つとして、さまざまな場面で提供されるべき ことが保障されています。わが国も、今年中に 権利条約を批准するのではないかと言われてい ます。しかし、これまでは、点字資料が提供さ れることはなかなかなく、視覚障害者は歯がゆ い思いをしていました。私は、国が行う会議や、 さまざまな会議に出ていますが、点字資料が用 意されていたことはまずありませんでした。点 字資料を作るのは大変だからと、電子データを 提供してもらうことでついつい我慢していまし たが、正確を期すには、やはり点字を請求して いかなければならないと、今回の会議で痛感し ました。 ただ、会議の資料などよりもっと大切なのは、 点字教科書の提供です。昨年、国会を通過した 「教科用特定図書に関する法律」では、国は、統 合教育で学ぶ児童・生徒に点字教科書を無償で 提供することに努める、と規定しています。し かし、文科省は、やっと重い腰を上げ、これか らどのようにすれば点字教科書を提供できるよ うになるかを勉強するといった段階です。弱視 者用の拡大教科書については、教科書出版社に 責任を押しつけ、出版社が製作するように仕向 けました。 しかし、点字はそうはいきません。大きな活 字で印刷すればいい拡大教科書と違い、出版社 には点字印刷する技術はありません。どうして も点字図書館や点字出版所に頼らざるを得ない のが実状です。当然経費も生じます。その財政 的負担も合わせて、文科省には決断をしてもら わなければならないと考えています。もし実現 すれば、それこそ、ブライユ生誕200年にふさわ しい成果となります。 3ページ What's New! 障害連、東京都交渉を行う 1月26日(月)、障害者の生活保障を要求する連絡 会議(障害連)は、「全身性障害者の地域生活基盤等 を求める要望」を、東京都福祉保健局に提出、交渉 した。都側から障害者施策推進部の自立生活支援課 長など3名が対応した。 今回は、言語障害のある全身性障害者が入院した場 合の介護のあり方について、重度訪問介護だけではな く、居宅介護からも適用してほしい、あるいは、障害 の重い人たちの生活施設の現状、そして施設待機者の 問題をどう考えるか、という問題に時間を割いた。 病院での付き添い問題については、原則認められ ないとしながらも、各市区町村がヘルパーの派遣を 必要と認めた場合は、それを尊重するというのが都 の基本方針であるとした。 これに対して、「市区町村がヘルパー派遣を認めて も、都立病院はそれを拒んでいる」という意見が出 され、病院担当部局に確認してみるとの回答を得た。 また、遠い他県の施設に障害者が送られていると いう現状について、「転換させていきたい」と都は答 え、地域生活移行を可能な限り進めていく体制での ぞんでいる、と答えた。 こちら側からは「障害の重い人たちの地域生活と 施設のあり方を問い直す検討会」のようなものを設 置させていくことを提案したが、今日は「そういう 意見をお聞きした」ということにしたい、という回 答に留まった。 差別禁止条例の制定は、「権利条約の動きに伴って 国としてもその市の法制度をつくろうとしている」 とする回答に留まるなど、都としてあまり主体的な 障害者政策を持てていないことが随所に現れる交渉 となった。 都立病院については、後日確認の必要性があり、 機会をみて再度交渉を持つことが求められている。 その際はこちら側もポイントをしぼる必要があるか もしれない。 今回は当事者だけでも15名程度、介助者をあわせ れば25名以上の参加となり、人数的には成功したと いえる。次回はもう少し中身の議論を実りあるもの にしていきたい。 要望事項 1.障害の重い人たちが家族から独立し、地域社会 で自立生活を実現できるように、市町村が社会参 加や見守りなど、障害のある個々人の必要性に考 慮したサービス支給量の決定を行えるように、都 として財政補助を必要に応じて行うこと。 2.障害の重い人たちが家族から独立し、地域社会 で自立生活を実現できるように、福祉・介護にお ける人材確保を目的とする緊急対策を講じること。 特に、現在の低く抑えられた報酬単価の下でのヘ ルパーの離職による人手不足は深刻であり、生活 を維持することが非常に困難になっており、都と して即効性のある対策を講じること。 3.都の施設においては、民間移譲が進められてい るが、移譲については利用者(自治会)の主体性、 意見を最優先として進めること。障害者の生活施 設を民間移譲するに当たっては、利用者の従来の 生活条件を維持することを前提とし、移譲先の法 人の決定に際しても、利用者の意向を十分に確認 し、了解のもと行うこと。また、既存の障害者施 設全てにおいて、入居者の人権やプライバシーが 守られるよう徹底すること。医療的ケアを必要と する最重度障害者が施設を利用する場合の、加算 制度を創設すること。 4.就労促進の側面が色濃い障害者自立支援法であ るが、地域社会との関係づくりや、障害の重い人 たちの主体的活動拠点としての作業所の運営を維 持するために、都の「心身障害者(児)等通所訓 練事業」を継続すること。 5.働くことが困難な障害者の年金制度など、国の 所得保障政策が不十分な中、障害によって生じる 必要経費を補う重度手当など諸手当については、 障害者の自立生活、社会参加、を実現させるため の役割を持っていることをさらに徹底・強化させ、 必要な人が受けられるようにすること。 6.障害者の権利条約が発効されたことを踏まえ、 都においても、実効性と強制性を伴った障害者差 別禁止条例を制定すること。 7.重度障害者の地域生活移行を進めるに当たり、 圧倒的に不足している障害者用住宅を確保する施 策を講じること。また併せて、全身性障害者が必 要とし、整備が遅れているグループホームを都有 地(公有地)を活用するなどして目標どおり整備 すること。 8.言語コミュニケーション障害等により、病院で 必要とする支援が得にくい障害のある全ての人が 安心して入院し、医療専門家による治療を受ける ことが出来るようになるために、居宅介護事業の 重度訪問介護のみならず、居宅介護の適用も認め ること。 9.ヘルパーの支援を必要とする障害のある全ての 人の入院中における介助需要に対応するために、 地方自治体として独自に居宅介護事業およびその 他の金銭給付制度の充実を図ること。 (障害連FAXレター146号より) 4ページ 全国障害児学級・学校学習交流集会に3日間で2千人を越える参加 第8回全国障害児学級・学校学習交流集会が1月 10日から12日まで東京で開催されました。 中野ゼロ大ホールでの全体会の翌日から、17の講座、 14の分科会、5つのフォーラムが立正大学で開催され ました。都庁展望レストランでの大交流会も含め、 子どもの見方、授業づくり、障害児教育の展望などを 学び合い、確信を深め合う3日間となりました。 全国から1,186人の実参加、3日間で2千人を越え る参加者が学び、子どもたちを主人公とする本物の 障害児教育について熱く語り合いました。 開催地東京で、障害の重い子どもたちを含めてす べての子どもたちが学校に就学できる「希望者全員 就学(全入)」を実現して35年目、全国で養護学校教 育の義務制が実現して30年目となる節目の年にちな んで、開会全体集会では、二つのビッグイベントが 取り組まれました。 記念シンポジウムは「これからの障害児教育と義務 制30年」、現地企画は「構成劇『未来へ』〜いのちの輝 きを〜」です。 シンポジウムで、東京の障害児学校に勤める採用 3年目の阿部のぞみさんは、夢や希望を持って教師 になった自分自身の1から2年目を振り返り「教員に向 いていない」「やめたほうがいい」と思っていた状況 を語り、「職場はいつも忙しくて、子どもの話が思った よりできなかった」が、悩みを一つひとつていねい に聞いてくれた組合の仲間の支えの中で、成長してい った自らの経験を話しました。 東京の障害児学級に通うお子さんを持つ加藤勇一 さんは、障害児教育を充実し、発展させる運動に参 加することになった経過について語り、「福祉や教育 は自分たちでつくり続けるものだといつも感じてい ます」と、共同の運動の大切さについて話しました。 兵庫県の特別支援学校に勤める三木裕和さんは、 「子どもたちの人権を実質的に保障する最後の人であ る現場を担う者が、どんなに情勢がきびしくても断 固として人権を守る立場に断ち切ろう」と経験にも とづいて語りかけました。 研究者の茂木俊彦さんは全員就学、義務制につな がるこの50年の歴史に立ち戻りながら、障害者の権 利保障の運動、義務制の実施を生み出した力、現在 の障害児教育における課題について解明しました。 構成劇「未来へ」で、東京のなかまたちは、全員 就学を実現させた東京の運動、教育の前進、その教 育を壊す東京都教育委員会の動き、障害児学級廃止 や七生養護学校への攻撃を許さない現在のたたかい などを演じ、つくりあげてきた教育の本質・大切さ と、東京都の乱暴な攻撃の中でも決して負けずにが んばっている姿を表現しました。 多数の青年を含む120名を超える都教組、都障教組 のなかまの出演、踊り、合唱が参加者の心に感動と 確信を広げました。 全体会の最後には、障害者自立支援法訴訟原告の、 五十嵐良さん(埼玉そめや共同作業所)が、自立支 援法の問題点、訴訟の意義と募金の訴えをしました。 会場出口では40万円を超えるカンパと、たくさんの 激励のことばが寄せられました。 障害児教育をめぐって、昨年12月末には、特別支 援学校学習指導要領改訂案が示されました。子ども たちの心に寄り添う教育から、国が定める目標を達 成させる教育へと、障害児教育を根本から転換させ ようとする攻撃が強まっています。激増する障害児 教育在籍児・対象児に対し、教育条件整備が全く追 いつかない中で、学校と教職員の自己責任論による 「特別支援教育」が広がっています。このような中で、 「ここに本物の教育がある」との確信と元気を全国の なかまで共有し合えたことは、日本の障害児教育の これからにとって、とても大きな意味を持つもので あり、大きな節目の年にふさわしい交流集会になり ました。(全教・杉浦洋一) 5ページ 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を 改正する法律」が成立 厚生労働省 中小企業における障害者雇用の促進や短時間労働 者の雇用義務対象への追加による障害者雇用施策の 充実強化等を目的とした「障害者の雇用の促進等に 関する法律の一部を改正する法律案」は、12月19日 参議院本会議において可決、成立した。平成20年3月 7日に第169回国会に提出、第170回臨時国会に再提出、 継続審議されていたもの。 改正点は以下の通り 1 中小企業における障害者雇用の促進 1)障害者雇用納付金制度の適用対象の範囲拡大 障害者雇用納付金制度(納付金の徴収・調整金 の支給)が適用される対象範囲を常用雇用労働者 101人以上の中小企業に拡大(一定期間は、常用雇 用労働者201人以上の中小企業まで拡大) ※現行は経過措置により301人以上の事業主のみ 2)雇用率の算定の特例 中小企業が、事業協同組合等を活用して、共同 で障害者を雇用する仕組みを創設 ※事業協同組合等が、共同事業として障害者を雇用 した場合に、当該組合等と組合員企業とをまとめ て雇用率を算定 併せて、中小企業に対する支援策を充実、経過 措置として負担軽減措置を実施 2 短時間労働に対応した雇用率制度の見直し 障害者の雇用義務の基礎となる労働者及び雇用 障害者に、短時間労働者(週労働時間20時間以上 30時間未満)を追加 3 その他 特例子会社がない場合であっても、企業グルー プ全体で雇用率を算定するグループ適用制度の創 設(障害者の雇用に特別の配慮をした子会社であ り、親会社と雇用率を通算できる) 4 施行期日 平成21(2009)年4月1日施行予定。ただし、上 記1の1)(障害者雇用納付金制度の適用対象の範 囲拡大)については、平成22(2010)年7月1日 (101人以上企業への拡大は、平成27(2015)年4月 1日)上記2(短時間労働者の雇用義務対象化)に ついては、平成22(2010)年7月1日。 6ページ 障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会ニュースC (JD のトップページから入れます。) 速報!滋賀と福岡で第1回口頭弁論 1)滋賀〜原告の母の訴えに大きな感動の拍手〜 2009年1月22日(木)、一斉提訴の口火を切っ て、滋賀で第1回口頭弁論が行われました。 勝利をめざす滋賀の会の寺川事務局長からの報 告=ドキュメント=です。 〔10時前〕 ○大津地方裁判所に支援者など集合。総勢150 名を超える数多い傍聴者のため、裁判所が、 50席の民事法廷から70席の刑事法廷に変更。 〔10:10〕 ○傍聴抽選始まる。60名が傍聴(残り10席はテ レビや新聞などマスコミ)。 〔10:30〜11:30ごろ〕 ○竹下全国弁護団長、自立支援法の矛盾点を暴 露。 ○滋賀の日比野弁護士がパワーポイントを使 い、憲法と自立支援法の関係や応益負担の矛 盾点をわかりやすく説明。 ○原告の母親・橋田さんと宇都宮さんが、補佐 人として裁判官に認められそれぞれ10分の意 見陳述…子どもの生い立ちや苦労話、作業所 に、本当に生きがいを持って通っている。け れども、応益負担の矛盾、生活の苦しさ、支 援の必要性…を切々と、裁判官を諭すように 語りかけました。「この悪法残して死ねない」 と。 ○原告の宇都宮真輔さんは、母親の発言の後、 拍手をしました。 ◎みんなの心の中では大きな感動の拍手でし た。 <11:40〜13:00報告集会、弁護士会館にて> 元永弁護団長(滋賀県の)がポイントを説明。 被告側は、裁判の中身よりも裁判手続きの問 題を言っているとのこと。即ち、“知的障害者 ということで訴訟能力がない、この二人には後 見人がいない”ということで入口でシャットア ウトする考えです。これについては弁護団が討 議し、方向を確認する。全体としては、被告 (国)側が真っ向から闘いにくることがわかった ので、原告もがんばろう!と、まとまりました。 ※寺川事務局長のひと言 原告の親御さんが、意見陳述で、代理人で も語れないことを裁判官に訴え、私たち支援 者の方が感動をもって聞き、大きな勇気をい ただきました。これから長い闘いが始まりま すが、この日が今後の歴史を変える大きなチ ェンジの日となるように、もっともっと支援 の輪を広げたいと思います。 2)福岡 原告の思い、裁判官に届け ◇福間サンテラスの西原さんの報告(要約) 1月30日(金)、100席の大法廷に180名を超す支 援者などが駆けつけ、車いす席、手話通訳者席な ども確保され、90名程が傍聴できました。 原告の平島さんの堂々と、落ち着いた意見陳述 から始まりました。 「障害基礎年金受給が認められず、収入は、利 用している第2つくしの里からの月8,000円から9,000 円の工賃と企業実習の手当だけ。利用料と給食費 を払うと手元に1,000円弱しか残らず、何も買えず 我慢している」という現状を裁判官に訴えました。 また「難病罹患前には手取り給料が20万円を超え る仕事をしていたのが現在は、働きに来て利用料 を払うことになり、ただでさえ生活が苦しいのに 自立支援法による応益負担を強いられ“これ以上 苦しめないでほしい!”」と強く訴えられました。 7ページ 〔作業所スタッフ・赤松さん、意見陳述で裁判官 に力強く迫る…根底に“障害自己責任論”がある 応益負担の根絶を!〕 朝は「行ってきます」と家を出て、夕方には 「ただいま」と帰って来る、当たり前の生活を送 らせてやりたいというわが子への思いからできた 作業所が、この法律の応益負担により「利用料が 払えなければもう通うことが出来ないかも」「今 さら在宅になるなんて」と、家族に大きな衝撃を 与えています。同時に、施設経営にも甚大な負の 影響を及ぼし、大幅な公費収入減少の中、職員の 昇給ストップとボーナスカットを余儀なくされ、 従来から他産業に比べ低かった賃金が一層低い水 準となってしまったのです。 〔中村弁護士の意見陳述〕 自立支援法の矛盾点を理路整然と述べられまし た。―この法の立法目的が、一般就労に向けた自 立推進の必要性であるとしながら、実際は応益負 担により働いて得た収入を取り上げて一般就労の 意欲を奪っている。これは「福祉の支援を受けるた めには収入をはき出せ、それが嫌なら家に引きこ もれ!」と言っているのと同じである。必要な福 祉に自己負担を課すのは、介護を受けて呼吸や食 事・排泄・入浴に税金を課すもので、有料で生存 権の行使をすることであり憲法25条に違反する。 障害のない人に課されない税金を障害者に課す ことは差別であり憲法14条違反である―などを訴 えられました。 〔竹下全国弁護団長による陳述…3つのポイント〕 1.立法段階から多くの問題がありつつ成立した 障害者自立支援法の応益負担は憲法13条の個人 の尊厳に違反している。 2.障害者の生存は自立と社会参加というが、重 度の人ほど制度利用をせざるを得ず、重度の人 ほど負担が多いというのは憲法25条の福祉の増 進に違反している。 3.原告が自身の障害やプライバシーをさらけ出 し、勇気を振り絞って訴訟を決断した最大の理 由は、応益負担のおかしさを多くの人に知って ほしいという思い、人間として生きていきたい という思いからである。 ◇各地の第2回目の口頭弁論の予定です。傍聴の ご支援、お願いいたします。 滋賀:4月16日(木)10時半から 福岡:5月8日(金)13時半から ◎注目!全国弁護団ウェブ…めざす会ホームペー ジから入れます。 ◎めざす会の地方組織情報…滋賀、福岡、広島で 地方組織ができました。東京、京都、兵庫、岩 手でも準備中です。 ■事務局より■ 3,000万支援募金カラーチラシ(振込用紙付) ができました! 事務局にご連絡いただければ、何部でもお送り します。大小さまざまな大会・集会や学習会で配 布していただき、より多くの人たちにこの裁判の 意義と原告のおもいを、支援カンパの訴えととも にアピールしていきたいと思います。カンパは、 原告とその家族を全面的に支えるために活用され ます。 ※3,000万円支援募金にご協力ください!! 振込先 ゆうちょ銀行 店名    〇〇八(ゼロゼロハチ) 店番    008   口座番号  2582376 名義人   めざす会(メザスカイ) 郵便振替口座 口座番号 00120−4−484666 口座名称 めざす会 8ページ JDFセミナー 「障害者権利条約における合理的配慮と人権」 ティナ・ミンコウィッツ 昨年11月29日、JDFセミナー「権利条約で変わる 私たちの暮らし」において、精神医療ユーザーで弁 護士資格を持つ法律の専門家でもある米国のティ ナ・ミンコウィッツさんが基調講演をされた。本稿 はその要約である。(文責:編集部) 1.「合理的配慮」とは 「合理的配慮」とは、ある特定の人に環境を合わ せ、必要な情報が得られ、コミュニケーションが できるように変化を加えなければならないという ことである。それにより、その人が人権を享受で き、他の人と平等となることが重要である。 この考え方は、障害のある人たちにだけ適用さ れるものではないが、障害のある人たちの多様な ニーズへの対応の中で発展してきた。環境は、障 害のある人に生きやすいようにはなっていない。 また情報等のアクセスしにくい方法のままでの提 供ということにも直面している。これを「合理的 配慮」で可能にしたい。システム上のアクセシビ リティは政府の義務だが、「合理的配慮」は、それ を個々人に機能させるよう補完するものだと考え る。障害がある人だけが、“私は社会一般から排除 されている、私のニーズが見えていない。社会に 参入させてほしい”と政府に言い続けるのは重要 である。 「合理的配慮」なしでは、障害のある人が、障害 のない人と全く同等な情報を得られないのだから、 「合理的配慮」により障害のある人たちが、ニーズ をいちいち訴えるということをなくすべきである。 そして、「合理的配慮」は、個人の権利としても 理解されている。これは差別されない、また権利 擁護のツールとしても利用できる。政府や企業の 環境整備で差別や不便を被っている場合は、「合理 的配慮」の必要性を訴えることもできるし、障害 のある人たちと同じようなニーズを持つ、すべて の人たちのためになるものとなる。 2.義務との関係 「合理的配慮」には、障害のない人たちが使える 建物は障害のある人たちも使えるべきだというこ とを含む。情報とコミュニケーションへのアクセ スも重要で、手話通訳の提供も含まれる。手話は 言語で、ろうや難聴の人たちへのアクセスとして 提供できるものである。 また、「合理的配慮」には、実施されている規則 等の変更もある。勤務時間が9時から17時の会社 でも、起床に介助が必要な場合とか、通勤に時間 がかかる場合、始業を9時より遅くしてほしいと いうことなどである。 障害者権利条約(以下、権利条約)を作り上げ る交渉の中でとても重要であったのは、「合理的配 慮」を提供するのは、政府の義務であることを強 調することであった。あらゆる可能な場で、「合理 的配慮」をしないのは差別である、と言っている が、雇用の場で、企業や組織などの合理的配慮を 訴えられている相手が「自分たちの会社は組織も 小さく予算も少ない。あなたの要求を容れると会 社は潰れる」という場合は「合理的配慮」は提供 しなくてよいとされている。但し、米国のADA (障害のある米国人法)の下では、その適否は裁判 官に委ねられる。つまり、「合理的配慮」として求 めるものがよほど過度の要求でない限り、企業側 がただ単に「自分たちはそこまでするつもりはな い」ではだめなのである。 3.合理的とは何か? 権利条約の交渉の際も言われたことだが、障害 のある人たちは、実はこの合理的という言葉を入 れたくなかった。ただ平等でありたいと思っただ けなのだが、結局「合理的配慮」に行き着いた。 この“合理的”とは何かを、ADAをモデルに述べ たい。 ADAでは、ケース毎の交渉となっている。企業 側が「過度な負担」と言った場合、通常は、裁判 の前に、障害のある人たちが「こういう合理的配 慮がほしい」という提案から始まる。直接、個別 の交渉があり、その後、提訴、となる。 何が合理的で何がそうでないかに関しては、企 業などの相手方が一方的に決めることはできない。 とても厳しい決まりがあり、配慮というのは本人 がほしがっていないのに押しつけることもできな い。サービスを提供する場合も、企業が「合理的 配慮」と考えても、障害のある本人がそれを望ま ない場合には、それは違うのである。提供する側 だけの視点で考えることは、「合理的配慮」とは言 わない。 ここで問うべきことは、“過度な負担”とはどの ようなものか、である。ADAでは雇用についてこ のことが詳細に示され、個々の配慮が記されてい る。 ADAと権利条約には違いが一つある。権利条約 では、必要とする個人が他者との平等を基礎とし て権利を享受しようとする場合、「合理的配慮」は 不可欠であり、そのため障害に基づくあらゆる差 別は、「合理的配慮」を否定することによる、とし ている。必要な変更や調整で、過度な負担でない ものは、障害のある人が平等にあらゆる権利の享 受のためになされるべきなのである。 4.「合理的配慮」は個人の権利 権利条約は[経済的、社会的および文化的権利に 関する国際規約]に関する一般的意見5の理念に従 い、国際人権条約では初めて、「合理的配慮」の否 定は差別の一形態であることを明確にした。 13条では司法との関連、14条では自由が奪われた 場合について書かれている。24条では、学齢期、 成人教育までを含めた教育の場での配慮、27条で は職場で求められる配慮が書かれている。 9条では、障害のある人たちに、交通や情報と コミュニケーション(インターネットや携帯電話)、 また、施設に平等にアクセスできる手段を要求し ている。それには、ユニバーサルデザインや既存 のデザインの変更が必要となるだろう。4条では 多方面の分野でのユニバーサルデザインについて 調査・促進を要求しているが、ただユニバーサル デザインだけあればいいということではなく、調 整の必要性が認められるべきである。 「合理的配慮」は個人の権利と考えられるべきも のであり、特定の調整や手段で達成できるものによ り障害のある人たちが他の人と同じくすべてのも のを共有・享受できるように最大限の柔軟性を持 つべきという考えの基盤だということなのである。 アクセシビリティでは、バリアの排除、既存シ ステムの調整、変更を加え、障害のある人たちに も平等なアクセスを得られるようすること、より 個人的レベルでは環境への適応、手続きの変更、 人的介助により特定の個人が権利を平等に享受で き、行使できるよう保障するものである。 5.差別をなくすのは即時的義務 4条の2で経済的、社会的、文化的権利の漸進 的達成といういう表現があるが、これは、諸権利 の実現には様々な社会的資源を必要とし、各国の 発展の度合などが多様なためである。 教育を受ける権利などは[社会権利条約]でカ バーされているが、差別をなくす義務は即時的な 義務だと考えられる。例えば、政府が小中学校教 育を完全に無料で提供できていないとしても、か といって障害のある人は後回しにすることは、差 別である。その国にリソースが不十分ならば、「合 理的配慮」の提供のために、それほどリソースを 必要としない方法を創造することも考えられるの である。 3条は、権利条約を規定する重要な原則で、こ れらがなければ「合理的配慮」を達成できない。 「合理的配慮」により、障害のある人が社会の様々 なシステムと関わり、慈善や福祉的なモデルに捉 われることなく固有の尊厳と個人の自立の尊重で、 特に障害のある人の自立が促進されることとなる。 6.意思決定への支援 精神障害についても「合理的配慮」は必要であ るが、雇用の場などでこの障害を明言して要求す ることは難しい。例えば、音楽のある環境の要求 というような、多様で複雑な内容のものは、他の 「合理的配慮」と比べると、企業としても対応が難 しい。例としては、支援者に電話をしてもらうと か、職場の人では提供しきれないことについて人 的介助を必要とする場合などである。 12条・法の前の平等では、法的能力を扱っていて、 まさに条約の核心と言える。障害のある人々は、 社会の中で最も立場が弱く、変化の要求のために 上げる声はあまりにも小さいのが現状である。司 法システムの中では、子どもと同じような地位し か与えられていなかった、とくに精神障害や知的 障害のある人たちにとって、司法システムの障壁 は取り除かなければならない最大のものである。 他の成人が持つ法的権利を享受できない状況にあ ったのである。 12条では障害のある人たちに、自ら意思決定する 法的能力をすべての生活のレベルで行使すること を認めている。“支援された意思決定”というのは、 人の自立を奪うものではなく、障害者自身の意思 決定を支援するものである。強制されるものでは なく、支援へのアクセスを保障するものであり、 障害のある人と支援する側との相互の意見交換の もとで個々のケースに相応しく配慮されて行われ るべきものなのである。 7.様々な協力関係の必要性 12条の履行には様々な法改正やプログラム改正な ど、困難なステップが必要となるだろう。支援で きる人の確保、また法改正に際しては、障害当事 者団体や良い意思を持った法律の専門家との協力 関係が必要となる。 個人的には、法改正を直ちにすべての国で行う ことは無理だと思っている。国が勝手に「私たち はこのように解釈した上で批准する」といった解 釈宣言を行うことは、障害当事者団体には受け入 れ難いことであり、国際法の下でも、あるべき権 利条約の原則に背くものである。 何も留保されず、誤った解釈での解釈宣言もさ れないで12条が完全履行されるには、まだ一定の 時間がかかると思う。 8.最後に 「合理的配慮」を求める運動は、障害のある人々 が平等を求める社会への活発な参加者と見るパラ ダイムシフトと言える。障害のある人は慈善や更 生の対象、また他人の世話を受けなければならな い人ではなく、社会の完全な参加者であり、自ら のニーズに基づいて自己決定し、そして社会に働 きかけていく主体者になるものと考えられる。 そして障害の社会モデルが、どのような障害が ある人であっても、平等な権利を持ち、インクル ーシブでアクセスできる社会を、配慮や支援によ って実現するのである。 障害の有無や、どのような障害があるのかにか かわらず、権利条約によれば私たちは皆平等であ り、障害を理由に権利を剥奪されることはないの である。 この権利条約履行のために障害者団体は協力し て活動していかなければならない。権利条約のキ ーワードは人々の自立である。様々な国で、様々 な側面から解釈されていくものである。権利条約 の履行、監視、モニタリングの際には、お互いに 助け合い、戦略を立て、私たち皆の権利を実現さ せるため、共に活動していかなければならないの である。 11ページ 報告 ニュージーランド研修 インクルーシブな社会の実現に向けてニュージーランドから学んだこと(1) 田園調布学園大学・人間福祉学部 助教 富永 健太郎 1.研修参加の機会を頂いて 昨年の秋、JDの推薦を経て、内閣府が主催する 「青年社会活動コアリーダー育成プログラム」に参加 する機会を得た。定例の政策委員会でこの話が出たと きに、「ニュージーランドは良くも悪くもわが国の福 祉政策の先をゆく国。ぜひ参加させていただきたい」 と思った。だが一方で、「ニュージーランド研修を経 て、この私がわが国の障害者施策に何を還元できると いうのか。もしかしたらこれはたいへん重大な責務を 負うことではないのか」という気負いと弱音が私のな かで交錯するのを感じた。 だが、そんな弱気な思いも、佐藤久夫政策副委員長 の「楽しんできてください」ということばで一掃され てしまった。派遣団の団長にはJDの石渡和実委員長、 そして日本各地の障害者施設で就労支援を行う団員 や、NPO法人を立ち上げて活躍する団員ら7名とと もに周到な事前研修を経て、いよいよニュージーラン ドに旅立つ日を迎えたのだった。 2.インクルーシブな社会の実現 飛行機を降りると、9年間ニュージーランドの政権 を率いてきた労働党に代わり、ジョン・キー党首率い る国民党が政権を取ったというニュースが飛び込んで きた。 ニュージーランドの社会保障は、主に、社会開発 省(Ministry of Social Development)と保健省 (Ministry of Health)によって担われている。今回の 研修では、ウェリントンで社会開発省と保健省を訪 問することになっていたので、政権交代とともに社 会保障領域の政策がどのように変化してゆくのか、 が私のなかでその後の関心となった。ここで、社会 開発省(障害対策部局)と保健省の役割について若 干の説明が必要かもしれない。 2002年、社会開発省はその内部に、障害問題対策 局(Office for Disability Issues)が設置された。2001年、 政府は、「ニュージーランド障害戦略(The New Zealand Disability Strategy)」という行動計画を打ち 出した。障害問題対策局とは、「完全に包括された社 会(Fully Inclusive Society)」という理念を具体化する ために、その行動計画がきちんと実際に遂行されて いるかどうかをモニタリングし、かつその理念や計 画に沿って、障害担当大臣をサポートする役割を担 っている。 一方で、保健省は、保健・医療サービスおよび障害 者・高齢者福祉サービスを策定する役割を担ってい る。同省には、地域保健委員会(District Health Boards)という21カ所の出先機関があり、この出先機 関の調査員(Assessor)によって、当事者の支援の必要 度が勘案され、それに見合った保健医療サービスが各 地において提供されている。 先に紹介したニュージーランド障害戦略のなかに、 「政府が行うと言ったことがなされるように障害のあ る人たちは注意して見ていく必要がある」との記述が 見られることは瞠目すべきことである。政府が障害に 特化した担当部局を置き、インクルージョンという理 念に基づく行動計画が適切に遂行されているかどうか を自らモニタリングする。さらに、それは障害当事者 の視点によっても評価されなければならないというこ とが、なんと政府の作成した行動計画のなかに盛り込 まれているのである。どれもわが国では未だ実現でき ていないことである。 わが国で自治体の障害者福祉計画の策定委員会など に出ると、策定委員のすることはあくまでも計画づく りであって、言葉は悪いが、「どうやって美味しそう な餅を描くか」に焦点が移ってしまうことがしばしば ある。ニュージーランドでそれは許されないのである。 インクルージョンだとか共生社会の実現だとかいうこ とばは、まことに口当たりのよいスローガンだが、そ の実現はさほど容易ではないことを改めて確認するに 至った。(つづく) 12ページ 連 載 北欧 最近障害者事情パートU 第2話 最重度の人たちと共に生きる 日本障害者協議会理事 全国障害者問題研究会事務局長 薗部 英夫 琵琶湖を望む長等山に当時びわこ学園はあった。 重症心身障害児たちが学ぶ分校もある。お会いした 細長い顔の医師が高谷清さん。その後園長となり、 糸賀一雄の「この子らを世の光に」を実践された。 高谷さんの講演の一節だ。 「糸賀の、この言葉は頭で考えて作られたり、書 かれたものではないでしょう」「“ねたきり”であり、 認識の能力も強く障害を受けている重症心身障害児 に接してきて感じたこと、深められてきたことから 感覚的に感じ、見えてきた子どもたちの姿があり、 そこに人間の本質を感じ、それを表現することにな った」「すべての人間の生命が、それ自体のために、 その発達を保障されるべきだという根本理念を現実 のものとする出発点に立ったことなのである」。 最重度の人たちは北欧ではどう生きているのだろ う。6度目の旅で、今回直接出会うことができた。 ■一番重い知的障害者が通うデイケアセンター スウェーデンのイエテボリ市にあるブリュッケ・ エステルゴート、ウプサラ市のフォルケ・べナルド ッテへメットは、重い障害のある子たちの総合的な 調査、研究、研修のための機関だ。そこでは一人の 子に関わる、親、教員、PT、OT、医師などがチー ムで1〜4週間の区切りで宿泊しながら研修を受け ていた。 今回は、ストックホルム市で一番重い人たちが通 っているというダンヴィクスタールスを訪ねた。23 人(18歳から63歳、年齢の上限はなく希望すればい つまでも利用可)が、朝9時から15時半まで利用し ている。ほとんどはグループ住宅に住み、リフト付 きタクシーで通って来る。 「学校を卒業すると家を出て自立する。仕事につ く。でも、日々の仕事にかわるものがここにありま す。それは権利なのです」責任者のヘレン(写真) が言う。「80 年代に制定さ れたLSS(社 会サービス) 法で、どんな 障害があって も、どこかで 活動する権利 があるとされたのです」。 ここでは、@健康、A活動、Bコミュニケーショ ン、C食事ができることをモットーにしているとい う。スタッフは13人+事務職2人。 「市はサービスについて全責任を負う」と法にあ る。障害ゆえに利用せざるを得ない「支援サービス」 を、自己責任として、応益負担で強要する国とは根 本が違う。 「“障害が重い”とは?その基準は?」と質問した。 彼女が答えてくれた。 ○重度とはコミュニケーションに困難を持っている 人たちのことだ。 ○このデイには最高点数=「5」判断の人が多い。 ○その点数は予算と関係する。 でも、ここには最重度の人たちはいなかった。 ■医療的ケアの必要な子ら フィンランドの首都ヘルシンキ(人口56万人)に 隣接するエスポー市は人口22万人。有名な携帯電話 メーカーのノキアの本社がある。少し車で走ると周 りには森が広がる。 大規模障害者居住施設・リンネコティは創立80 年。教会関係組織によって財団がつくられ、39 年に 農場を買い大規模な施設をつくった。利用者は現在 300人。10人ほどが住む様々なユニット(棟)が広 い敷地内に点在している。スタッフは総勢750人。 約40の自治体から委託を受け、いくつかの大学とも 共同研究を行っている。重複障害者や重い自閉症の 人たちもいるという。 障害程度の基準と費用負担について、准看護師で 開発コーディネーターのアンネに質問してみた。 「専門家を含めたチームによって検討し、家族も納 得の上、入所している」「費用負担を含め、責任は 生まれた自治体にすべてある」が答えだ。 「重症児のユニット」には10人が住んでいた(写 真は個室のドアに貼って あった日課表)。 「医療的ケアが必要な 子どもたちね」。障害乳 幼児の療育に長くたずさ わる旅の仲間がつぶやい た。 ○口から食べられる子は 4人。その他はチュー ブ。 ○学齢児は道を挟んで学校があり、そこに通う。 ○3人の男子は乗馬セラピーにも行っている。 ○最も重い重症の2人はこの棟が暮らしの場。 ○サウナもある。自閉の子はとても落ち着く。 ■盲ろう者が暮らすユニット つぎに案内されたのが、フィンランドで唯一とい う盲ろう者の棟で、25歳から63歳までの12人が暮ら していた(写真)。見えない、聞こえない、そして 重度の知的障害、肢体不自由の人もいる。13人のス タッフが、午前4人、午後4人、夜間1人の体制で 支えていた。 にこやかに話してくれたのは若い女性スタッフ だ。「ここは施設ですが、“自分の家”です。カギは 外に行くドアとキッチンにいくドアだけに付いてい て、それ以外は自由に歩けるように考えられていま す」。 案内された部屋によって、マリメッコのデザイン の色が違う。床の色もそれぞれの部屋で変化してい る。気がつくと、スタッフのシャツの色もいろんな 色合いだ。 「見えなくても色の違いには意味があります。そ れを考えてカラーコーディネートしています」「色 も匂いも、いろんな刺激を考えています」「ロック が鳴ってますね。これは少し聴覚のある人に低音の 振動が大事だからです」。感覚にはたらきかけるい ろいろな道具もそろっていた。 「食事は中央棟から運んでくるので、ここには食 事をつくる匂いがないので、できるだけ、この棟で パンを焼いたりして匂いを出しています」。 日本政府は障害者権利条約にある「deafblind」を 「重複障害」と仮訳し、「盲ろう」としていない。フ ィンランドは「盲ろう」であることの特別な困難を 支える施策があり、意欲的なスタッフたちがいる。 その違いはどこからくるのだろう。 「北欧は、あまりに今の日本とかけ離れている。 比較の対象にならないよ」と言われることもある。 でも、当たり前のことを当たり前のこととして確か に実現している国がここにある。それは大きな希望 だ。(つづく) メモ ■学校や居住施設含め利用する支援サービスの選択も主体は 障害者本人であり、その費用は生まれた自治体が持つ。 ■居住施設では、人権を守りながら、より小さなユニット、 「家」とよべる単位まで改善している。小さな単位になっ ても手厚い支援はゆるがない。 □資料「北欧ノート」 http://www.nginet.or.jp/?inbe/ 14ページ インフォメーション トピックス(09年2月号) ●高齢障害者施設が農園作業で小豆 栽培を 京都府 福祉施設「しあわせネット・勇気」 は08年春に開所した高齢障害者の ための施設。福知山市南栄町にある。 作業の中心は、夏から秋にかけて借 り受けた農地での小豆栽培である。 手を掛けて仕分けした大粒の豆は評判 が良く、ほぼ完売したことを祝って、08 年12月21日に近くで収穫祭を開いた。 同施設はNPO人権の会しあわせ ネットワークが運営に当たり、市内 の惇明小学校グラウンドに隣接し て08年4月1日に開所した。現在11 人が通所しており、仕事の中心は カーナビ部品の下請け加工作業。 全世界的な経済不況の影響を受け、 仕事が急減し、今後も見通しは厳 しい状況を迎えている。 通所者の平均年齢は64.7歳。速度 を必要とする仕事は苦手でも、根 気よく丁寧な仕事は得意とあって、 府が市内に農地約20アールを借り 受けて丹波大納言の栽培に取り組 んで農作業を始めたが、この小豆 栽培はピッタリだった。 「ゆうき農園」と名付け、7月に種 をまいて10月に収穫した。収穫祭は 午前10時から岡ノ三教育集会所で 開き、午前中はもちつきなどをし、 午後はボランティアたちによる南 京玉すだれ、安来節などを楽しんだ。 一井義光施設長は「多くのみなさ んに支援いただけたおかげです。お 年寄りたちが生き生きと作業してお られ、農園は予想以上の効果をもた らしてくれています」と喜んでいた。 ●「農業分野における障害者就労支 援セミナー」開催 農林水産省 農林水産省経営局では、農業分野 における障害者雇用の推進に資する ため、独立行政法人農業・食品産業 技術総合研究機構農村工学研究所 (以下 農研機構・農村工学研究所) との共催により、「農業分野における 障害者就労支援セミナー」を国内3会 場(埼玉県、新潟県、広島県)におい て開催することにしている。 近年、農業就業人口の減少や高齢 化が進展しつつある中、農業分野に おいては幅広い人材を活用していく ことが不可欠となっているが、一方、 植物の栽培や動物の飼育などの作 業は、やり方を工夫すれば障害者に 対応可能な部分があり、障害者が農 家のための貴重な労働力になるとと もに農業は障害者が働く場の一つと して注目されてきている。 当セミナーは、国内3会場で開催し、 農業分野における障害者就労につ いて、ノウハウを農業者向けに取り まとめた手引書の紹介、西欧諸国 における障害者の活動に関する基 調講演および農業の福祉力・福祉 の農業力に関するパネルディスカ ッション等を通じ、農業関係者と 障害者福祉関係者の協働による農 業・農村の活性化について学び合 う機会を提供することにしている。 (問い合わせ先)経営局人材育成課 女性・高齢者活動推進室 代表:0 3 - 3 5 0 2 - 8 1 1 1 (内線5194) ダイヤルイン:0 3 - 3 5 0 2 - 6 6 0 0 ●タッチスクリーン人気に視覚障害 者が懸念 アイフォン iPhone が火付け役になり、タッチス クリーンが人気だが、目で見て操作し なければ使いこなせないこともあり、 視覚障害者の懸念を呼んでいる。 今、流行のアイフォンの販売促進が火 付けの役割を果たした「タッチスクリ ーンガジェット」(手で画面に触れて 操作する携帯電話やICレコーダー、 デジタルカメラなど)のブームを受 け、家電製品が視覚障害者の手が 届かないものになるのではないか という懸念の声が出てきている。 アメリカの視覚障害者の権利擁護 派は、ラスベガスで開催された世界 最大のガジェット展示会Consumer Electronics Show(CES)を訪れ、メ ーカー各社に視覚障害者のニーズ を考慮するよう求めた。 権利擁護派は、製品設計者が視覚 障害者のニーズを考慮に入れれば、 視覚障害のない人にも使いやすい 製品ができるだろうと主張している。 タッチスクリーン人気により操作 が難しくなり、テレビやステレオの ようなかつては単純だった製品が、 視覚障害者にとって使いにくいもの になっている。そうした機器をうま く使いこなすには、複数のメニュー を目で見て操作する必要があるこ とが多いことは確かだ。 メーカーは電卓や腕時計からコ ンピューター、音楽プレーヤーま であらゆるものにタッチスクリー ンを導入してきているのが実情。 開発関係者は、タッチスクリー ン携帯が目で見なくても使えるよ うになれば、視覚障害のない人々 が運転中に使ったり、視力が悪く なりつつある高齢者が使うのに便 利だろうと語り、必ずしも、否定 的な面だけではなく、技術革新に より、タッチパネルの持つ視覚障 害者の利用に際しての難点も克服 し、障害の有無に関わらず利用で きる途はある、と語っている。 (ロイター’09年1月9日参考) ●障害者被災時対策・近隣施設職員 誘導役に 大分市 大分市では、09年2月1日から障 害者が自立するために地域で共同 生活するグループホームや、ケアホ ームなどで火災が起きた際に、近く に住んでいる福祉施設職員が駆け つけ、障害者の避難誘導を手助け する事業を始めることにした。この 試みは、同市によると、全国でも珍 しい取り組みということである。 大分市内には、45カ所、世話人 の援助や支援員による介護を受け ながら、数人の障害者が共同生活 している所がある。現行の障害者 自立支援法では、夜間に世話人な どがホームに常駐する義務はない ため、災害発生時の対応が課題に なっていた。 この事業では、障害者を避難誘 導する場合、専門的なノウハウが 必要なため、大分市が社会福祉法 人などで働く支援員を「支援協力 員」として登録。火災が発生した ら、入居者が、障害者の相談業務 などを行っている社会福祉法人 「博愛地域総合支援センター」(同 市下郡)に連絡し、同センターが 最寄りの支援協力員に伝える仕組 みである。現在、支援協力員には 約150人が登録しており、今回の仕 事は避難誘導は火災に限られるが、 今後は地震、風水害等にも対応す ることを検討しているという。 ●知ってほしい『内部障害』マーク 手足の不自由な障害とは違い、 外見から判断しにくい内部障害の ある身体障害者への理解を求める ために作られた「ハート・プラス」 マークの普及活動が、全国で地道 に続けられている。 厚生労働省の06年7月の調査では、 全国の内部障害数は107万人である。 「思いやりをプラスして」との願 いを込め、5年前に特定非営利活動 法人「ハート・プラスの会」(名古 屋市)がマークをデザインしたも の。内部障害者の数は増加してお り、一般市民の理解と協力が求め られているところ。 見た目では障害者とわからない ため、電車やバスの優先席に座る と、白い目で見られることもしば しば起きている。ハート・プラス の会理事の村主さんによると、車 いすをあしらった身障者マークの ある駐車スペースに内部障害者が 駐車し、誤って注意されるケース はよくあり、駐車スペースをめぐ り、肢体不自由者と内部障害者と の間で障害の深刻さを競ってトラ ブルが起きるケースもあるという。 ●災害備蓄用パン、ギフトに 障害者 施設が販売 宮城県 (社福)栗原秀峰会(栗原市)は、 施設内で知的障害者が製造する缶 詰災害備蓄用パンを、贈答用セッ トにして1月下旬に販売を開始し た。宮城大の事業構想学部デザイ ン情報学科の学生ら6人が、パン のセールスポイントがわかるラベ ルや箱のデザインを手掛けてくれ、 「災害時でなくても手に取って食べ たくなるイメージ」を意識した贈 答用ラベルや箱を新たに作っても らった。販路拡大を図り、障害者 が作業する機会を増やしていきた いという考えだ。 パン製造やラベル貼りなどは、 栗原秀峰会が運営するパン工房 「いそっぷ」(栗原市)で知的障害 者らが担当している。この災害備 蓄用パンは、5年間の長期保存が 可能な点が最大の特長。 主婦や企業などがお祝い返しや 贈答品として利用してくれること も考慮し、1箱1,000円程度の値段と いう。 「障害者の作業の場を増やすため にも、パン製造会社と競争し販路 を開拓しなくては」と、施設長は 意気込みを語っている。 ●「月末の人」厚意忘れない 大分県日田市 日田市南友田の知的障害者通所 授産施設「いきいきランド」に、毎月 3,300円の寄付を届ける匿名の男性が いた。7年間に延べ82回、総額は27 万円を超える。施設は、毎月末に訪 れるこの男性を「月末の人」と呼ん で感謝していたが、男性が亡くなった ことが昨年12月にわかった。施設の 利用者たちはその死を悼みながら、 「家族や周囲の人にも感謝の気持ち を伝えたい」と話している。60から70 歳代と思われる男性が姿を現した のは2001年10月。3,300円の新札が入 っている封筒を職員が受け取った。 男性は必ず月末ごろに施設を訪 れ、寄付金をわたすと足早に帰っ て行った。職員が「お礼状を出し たいから」と何度も名前や住所を 尋ねたが、決して明かさなかった という。 「月末の人」は08年の9月を最後 に、姿を見せなくなったので、職員 が安否を気にかけていたところ、 12月中旬に1通の手紙が男性の奥さ んから届いた。10月に突然他界した ため、寄付が続けられなくなった ことが綴られており、1,000円分の 図書券が同封されていた。 16ページ パラボラアンテナ 76 産科医療補償制度 花田 春兆 それに対する抗議文が、JDのEメールで送られてきて 初めて、そんなものがすでに厳然と存在してしまって いるのを知った。 CP(脳性マヒ)児の親たちが、原因を医療ミスに求 めて訴訟を起こしている、というTVニュースはチラリ と見た記憶はある。 訴訟ブームもここまで来たかと思い、以前の親たち とは随分変わったなと感じ、関わることを避ける医者 が増えるのではないか…と案じた。 もちろん、同じ障害者でも、公害・薬害・事故など と違って、保障を求める相手を得ぬままに、置き去り にされるような焦燥感からの、一種の共鳴はあったけ れど…。 だが、こちらのアンテナ具合もあってか、以後それ に関連する報道に接した覚えはない。 国民を口にしながら政権争いのみに終始している政 局、多発する凶悪犯罪、そして深まる不況…マスコミ の主流はそちらに追われて、それどころでないのは当 然なのだろう。 でも、こちらにとっては執拗に喧伝される内閣支持 率なんてものより、“それ”を巡る動向の方が、直接生 命そのものに関わってくる問題なのだ。 その抗議文が提示している問題点を、目に触れるま まに辿ってみよう。 “優生”への危機感。前回その法制化を巡って、激し い反対運動が展開されたのは、70年代初頭。30年以上前 のことだ。マスコミも積極的に触手を伸ばしていたし、 世間の関心も相応に高められていたはずだ。 だからこそ、劣生?と見なされがちの者の、生存権 を賭けての、“処置”されることに反対を叫ぶCP団体と、 “処置”するか否かの選択こそ女性の権利だと強調する ウーマンリブの女性団体。この相反する主張の双方の 運動家たちが、一つのTV番組に招かれて、お互いの主 張の差を確認するとともに、こうした個人の尊厳に関 わることまで、安易に法的規制で束縛しようとする国 家権力の介入には、絶対反対という共通の基盤での闘 いであることも、共有できていたはずだ。 そう、この頃はまだ、為政者が望む各個分断も、今 ほどに徹底されず、連帯する余裕があったのだ。 飛躍し過ぎだろうが、燻りながらも、ともかく社共 の革新連合が保たれていた美濃部都政の時代が懐かし まれる。 親との意識の差異。抗議文が指摘するようにCPを名 指ししたそれが、一般に見られるCPへの蔑視・一種の恐 怖感を助長するものだとすれば、それを誕生させた親た ちの運動こそ、そうした一般の概念を増幅し決定付ける ものということにもなりかねない。そしてその底には、 CPを負の存在としか見られない親自身の陥っているマ イナス志向が、ありありと姿を現しているのだ。 70年代のCP運動の軸の一つは、超克すべき親の存在 に向けられていた。 独立した生命としての自己を確認するために、親は、 先ず越えなければならない一番身近な障壁に違いなか った。 いつまでも一方的に庇護の対象としか認めていなか った子ども?側からの、思いがけない“親離れ宣言” に、親たちの間にショックの波紋が広がった。裏切ら れたという怒りもあっただろう。 親の会の役員と、CPの論客。親と子、それぞれの立 場を代表する人たちの、熱の篭もった応酬を、私は何 度か耳にしている。 今、その熱気は再現するのだろうか。 70年代のCP運動の盛り上がりには、それを10年も遡 る以前からの、同じCP仲間による、歴然たる子殺しを、 安楽死・心中と美化して容認してしまう親たちや社会 に対しての、根強い告発運動の積み重ねがあったのだ。 そこを起点として自立生活に至る障害者運動の歩み を、強引に振り出しに引き戻しかねない現在の危機。 この抗議文からもそれは読み取れよう。 そしてもう一つ気になるのは、若い世代の福祉意識 の低下。逆に差別感は強まっているようだ。 この世代は、元凶とされた差別語はほぼ根絶された 時代に育っているはずだ。言葉は無くなっても実態は 少しも変わらず、悪化の面も見せている。罪を問われ て抹殺された言葉たちの、多くが濡れ衣での処刑だっ たことを実証しているのだ。蔽い尽くしても無関心・ 無理解を招くだけで、解決にはならないのだ。 表紙3 ■編集委員 福井典子(日本てんかん協会) 金子 智(全国腎臓病協議会) 君塚 葵(日本整形外科学会) 小林良廣(全国聴覚障害者親の会連合会) 武者明彦(ゼンコロ) 八藤後猛(日本大学理工学部建築学科) 朝山 恵(鉄道弘済会) 坂下 共(きょうされん) 編集協力 荒木 薫 編集担当事務局 中村喜長 編集後記 新しい年の幕開けとともに活発な活動が展開さ れていて「今年こそは」の思いにあふれたあけく れです。「障害者自立支援法」と「障害者基本法」 の見直し、「障害者権利条約」の批准の3つを一体 のものとしてとらえる運動がさしせまって重要に なってきています。 そうした折に悲しいお知らせですが、本誌の編 集委員、東京都身障運転者協会の金子祐二さんが、 去る1月11日急逝されました。享年78歳でした。 金子さんは毎月1回の編集委員会に必ずといって いいほど出席されて、いつも創意あふれる提案を してくださいました。とりわけ戦争体験を通じて の平和への思いを語られるときの情熱あふれるお 姿が忘れられません。 謹んでご冥福を祈ります。 さて、日本障害者協議会の出番の今年にふさわ しく、去る1月13日に新年会が開催されました。 各団体からの意気高い決意表明とともに、わが 広報委員会も、この「すべての人の社会」を文字 通りもっと大勢の方々に広げたいと訴えました。 読者のみなさんもどうか、ご協力のほど、よろし くお願いいたします。 参加団体、とりわけ当事者組織の記事を掲載す ることにも、今年は力を入れていきますので、ぜ ひ積極的な投稿をお願いしておきます。 本誌を読まずして、障害者運動は語れない位の 誌面充実をめざしていきたいものです。 厳寒に耐えながら、しきりに暖かい春の訪れが 待たれるこのごろです。みなさんも、どうかお元 気でお過ごしください。(福井典子) ※視覚障害のある人のための営利を目的としない 本誌の録音図書、点字図書、拡大写本等の作成は自由です。 メンタルヘルスの集い (第23回日本精神保健会議) あなたの中に、そして私の中にも〜精神障がい者への差別や偏見を考える〜 詳細は下記をご参照ください。 開催趣旨 日本精神衛生会は、「メンタルヘルスの集い(日本精神保健会議)」 を毎年春に朝日ホールで開催しています。  この会は、「こころ」をめぐる重要な問題について、その都度テーマを掲げて、精神保健福祉の関係者、教育関係者、さらに一般市民、 当事者が広く参加し、ともに考え、討論して、今後の課題を話し合 う集まりです。 日時 平成21年3月7日(土)10時から16時(9時半開場 会場 有楽町朝日ホール(有楽町マリオン11F) 主催(財)日本精神衛生会 後援 厚生労働省、東京都、(社福)朝日新聞厚生文化事業団、(社福)NHK厚生文化事業団、財)メンタルヘルス岡本記念財団、(財)明治安田こころの健康財団、(財)ヤマト福祉財団 プログラム 映画鑑賞ほか 10時から12時 文部科学省選定映画 ふるさとをください 脚本:ジェームス三木 監督 富永憲治  出演:大路恵美 ベンガル 烏丸せつこ 石井めぐみ 中山仁    藤田弓子 他 フォーラム 13時から16時 あなたの中に、そして私の中にも 〜観て、語って、分かちあおう〜 ●私からひとこと  武末顕一郎(全国精神障害者団体連合会事務局員) 野村 忠良(東京都精神障害者家族会連合会会長)神澤 都子(パイ焼き窯サポーター) ●フロアもいっしょに ●まとめのシンポジウム新福 尚隆(西南学院大学教授)谷野 亮爾(日本精神科病院協会副会長)増田 一世(やどかりの里常務理事)生井久美子(朝日新聞地域報道グループ記者) ●総合司会 上別府圭子(東京大学大学院准教授) 財団法人日本精神衛生会事務局 〒162-0851 東京都新宿区弁天町91 電話03-3269-6932(FAX兼用)メールアドレス z-seisin@dc4.so-net.ne.jp 参加費無料(事前予約不要)  http://www.jamh.gr.jp/gyouji.html 奥づけ 編集/ 日本障害者協議会 TEL 03-5287-2346 FAX 03- 5287-2347 E-mail office@jdnet.gr.jp URL http://www.jdnet.gr.jp 発行/ 日本障害者リハビリテーション協会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 TEL 03-5273-0601 FAX 03-5273-1523