障害者自立支援法への対応策 50問50答 一問一答(第2版)
「50問50答」質問内容一覧
1.申請からサービス利用までの流れの中で
Q1(申請)/Q2(手続き)/Q3(介護給付・訓練等給付)/Q4(障害程度区分と支給量)/Q5(障害程度区分とサービス)/Q6(経過措置)/Q7(調査員)/Q8(調査の同席)/Q9(一次判定)/Q10(調査予定)/Q11(判定ソフト)/Q12(障害程度区分)/Q13(二次判定)/Q!4(審査会)/Q15(不服審査)/Q16(主治医意見書)/
2.障害者自立支援法による利用者・家族の不利益を少なくするために
Q17(応益負担)/Q18(グループホーム)/Q19(グループホームの個別減免)/
Q20(自己負担) /Q21(同意書)/Q22(負担軽減)/Q23(世帯分離)/Q24(預貯金額の確認)/Q25(工賃収入)/Q26(社会福祉法人減免)/Q27(自立支援医療)/
Q28(上限管理表の紛失)/Q29(自立支援医療受給者証)/Q30(市町村の単独減免)/Q31(就労支援)
3.地域生活支援事業に関すること
Q32(地域生活支援事業)/Q33(小規模作業所)/Q34(小規模通所授産施設)/
Q35(移動支援事業)/Q36(手話通訳)/Q37(日常生活用具)/Q38(ストマ用装具)/Q39(市町村単独事業)
4.障害福祉計画について
Q40(障害福祉計画)/Q41(意見反映)/Q42(基本指針)/Q43(数値目標)/
Q44(基盤整備)
5.職員の皆さんへ
Q45(退所の相談)/Q46(日額化の影響)/Q47(上限管理)/Q48(職員の生活)/Q49(新体系移行) /Q50(職員として)
1.申請からサービス利用までの流れの中で
(申請)
Q1:サービスを受けるには障害程度区分の認定を受けなくてはいけないと聞きましたが、どうすれば良いでしょう?
A1:まだサービスを受けていない場合は、市町村の福祉相談窓口または市町村が委託している生活支援センター等で相談してください。具体的にご自身がどのようなサービスが必要なのか、できるだけ細かく説明しましょう。申請については本人または障害児の保護者が行うことが原則となっていますが、代理人でも可能です。
(手続き)
Q2:ホームヘルプサービスやショートステイの制度があることを知りました。利用したいときには、どのような手続きが必要なのですか?
A2:受けようとするサービスが、@介護給付に該当するものか、A訓練等給付に該当するかによって違います。まずははっきりとした希望を持つことが重要です。
介護給付の場合は、支給決定のため、障害程度区分認定調査を受ける必要があります。コンピューターによる一次判定、審査会での二次判定を経て、障害程度区分が決定されます。その結果に基づいて市町村によって支給決定が行われます。
(介護給付・訓練等給付)
Q3:介護給付と訓練等給付の違いがよくわからないのですが?
A3:自立支援法に基づくサービスは介護給付と訓練等給付の2種類に分類されています。
介護給付
居宅介護 児童デイサービス
重度訪問介護 短期入所
行動援護 重度障害者等包括支援
療養介護 共同生活介護(ケアホーム)
生活介護 施設入所支援
訓練等給付
自立訓練(機能訓練・生活訓練)
就労施行支援
就労継続支援(A型・B型)
共同生活援助(グループホーム)
介護給付と訓練等給付は、義務的経費といって国の財政負担が義務づけられているかわりに、応益負担も課せられています。さらに介護給付では、障害程度区分の判定結果によって、利用できるサービスの種類が限定されたり、サービス量への影響があります。
(障害程度区分と支給量)
Q4:障害程度区分によって、一か月にどのくらいのサービスが使えるのか決まるのでしょうか?
A4:障害程度区分とサービス支給量は、原則的には連動しません。国は概況調査票やサービスの利用状況票から、利用できるサービスの種類と量を決定するものとしています。しかし、ホームヘルプの国庫負担は、障害程度区分ごとに基準額が定められていたり、障害程度区分ごとに市町村の支給決定基準が定められたりするなど、支給量の決定と密接な関係を持っていることは否定できません。
(障害程度区分とサービス)
Q5:障害程度区分によって使えるサービスが決められてしまうのですか?
A5:一部のサービスは、対象となる利用者が障害程度区分で限定されます。具体的には以下の表のとおりです。
事業名
対象者
生活介護
区分3以上(施設入所を伴う場合は区分4以上)
ただし50歳以上のものにあっては、区分2以上(施設入所を伴うものについては区分3以上)
療養介護
1)気管切開を伴う人工呼吸器による呼吸管理を行っているものであって、区分6以上
2)筋ジストロフィー症患者または重症心身障害者であって、区分5以上
居宅介護
区分1以上
行動援護
区分3以上
重度訪問介護
区分4以上
施設入所支援
1)生活介護利用者のうち、区分4以上のもの、但し50歳以上は、区分3以上
2)自立訓練または就労移行支援の利用者のうち、地域の社会資源の状況等により、通所することが困難であるもの
(経過措置)
Q6:判定の結果で、今利用している施設が利用できなくなると聞いたのですがほんとうですか?
A6:現在サービスを利用している人については、2011年度末までは今の施設にいられるという経過措置がありますが、それ以降は利用できなくなります。すでに利用されている方が行き場を失うようなことはしないようにと、国から通達も出ていますが、今後別の施設にいきたいと考えた際に、自己選択の枠が狭まる可能性があることも確かです。
(調査員)
Q7:どういう人が、どうやって私の障害を調査しに来るのか心配です。
A7:市町村または委託された指定相談支援業者等の認定調査員が、全国統一の調査項目及び調査票により行います。調査内容は以下のとおりです。
・本人及び家族の状況、現在のサービス利用状況、介護者の状況、居住環境などを調査する概況調査
・心身の状態についての106項目調査
・その他特記事項
(調査の同席)
Q8:きちんと障害をわかってもらうには、どうすれば良いでしょう?
A8:自分の障害の状況をよくわかっている、家族や施設・作業所職員などのアドバイスを受けることをお勧めします。自分ではなかなかうまく伝えられないことも多くありますので、同席してもらうといいでしょう。
(一次判定)
Q9:自分で106項目調査をして、国のソフトに入力してみたら、一次判定で非該当と出ました。わたしはサービスを受けられないのですか?
A9:一次判定は、介護の必要性を身体状況から算定するようになっています。106の調査項目のうち、79項目は介護保険の要介護認定調査項目と共通のものを使用していて、残る障害者独自の27項目すべてが、一次判定で使用されている訳ではありません。一次判定で非該当となっても、一次判定で使用されなかった項目群や、医師意見書、特記事項の記載内容等を加味して、審査会で二次判定されるので、一次判定結果でサービスが受けられないと決まった訳ではありません。また、障害程度区分を認定するのは介護給付のサービスを利用する場合のみで、訓練等給付は障害程度区分にかかわらずサービスを利用することができます。
(調査予定)
Q10:認定調査の際、介護給付と訓練等給付とでは違いがあるのですか?
A10:介護給付は障害程度区分の認定が必要ですが、訓練等給付については106項目調査を行ないますが、障害程度区分の認定は行ないません。調査や市区町村審査会の二次判定などに一定の時間を要すことから、現に介護給付を利用する方の調査から優先して行なわれているようです。旧体系の支援費の施設サービスのみを利用されている場合は、認定調査は行なわれません。新体系の事業に移行する際に調査します。
(判定ソフト)
Q11:知的障害や精神障害、視覚・聴覚障害者などは、多くの支援が必要な場合でも判定が低く出ると聞いたのですが本当ですか?
A11:一次判定結果では、障害程度区分が低く出る傾向があります。詳しくはQ9の回答をお読みください。
(障害程度区分)
Q12:判定は低いほうがいいのですか、高いほうがいいのですか? 何がどう違うのかがわかりません。
A12:障害程度区分が低いと、例えば行動援護などのサービスが受けられない場合があります。逆に判定が高く出ると、障害程度区分に応じて単価の違うサービスを利用すると、自己負担が増えるという問題があります。
(二次判定)
Q13:二次判定とは何ですか?
A13:一次判定のコンピューターによる障害程度区分は、調査した106項目すべてを反映しているわけではありません。市町村審査会において、一次判定で使われなかった項目、医師意見書、チェックリストでは把握しきれない特記事項を加味し、審査委員の合議によって障害程度区分を認定することを二次判定と呼んでいます。
(審査会)
Q14:審査会にはどんな人が参加するのですか?
A14:福祉関連に従事する方・学識経験者・医師などとなります。これらについては公開事項となっていますのでどのような方が参加されているかについては各自治体に聞いてみましょう。
(不服審査)
Q15:審査委員に私たちの障害を理解してもらえるのですか? 必要な支援を理解してもらえるのですか? 出された判定に異議を唱えることはできるのですか?
A15:障害の理解や、必要な支援を理解するために、特記事項に記載されている内容を読み込んだり、主治医の意見書を提出してもらったりする必要が生じます。また出された判定に不服がある際は、都道府県に対して不服の申し立てを行うことができます。書面が原則になっていますが口頭の審査請求でも可能です。
(主治医意見書)
Q16:主治医の意見書が必要と言われましたが、あまり病気もしないので主治医はいません。そのようなときにはどうしたらよいでしょうか?
A16:市町村が協力医を確保して、主治医のいない方の意見書の記載をお願いする形をとるよう国が指導しています。市町村の窓口か、市町村が委託している生活支援センターの窓口に相談してください。
2.障害者自立支援法による利用者・家族の不利益を少なくするために
(応益負担)
Q17:サービスを利用すると1割の利用料がかかると聞きましたが、一体どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
A17:基本的にはサービスに要した経費の1割を負担することになります。例えばショートステイの場合、利用料は障害程度区分によって違いますが、一日につき区分6の人は890円、区分1、2の人は490円となっていて、これ以外に食費等の実費がかかります。世帯の収入に応じて、月額の負担上限額が設定されます。また、所得や利用するサービスによって、負担を減免する制度がありますので、市町村に相談して利用しましょう。
(グループホーム)
Q18:現在グループホームで暮らしています。自立支援法で仕組みが変わると聞きましたが、どういうふうに変わるのでしょうか?
家賃や光熱水費のほかにもお金がかかるそうですが、一体どの位かかるのか、今までと同じ生活を送ることができるのかどうか不安です。
A18:現在のグループホームは、10月から「グループホーム」や「ケアホーム」に移行することになります。自分のグループホームがどうなっていくのか、運営する人とよく話し合ってください。
利用に際しては、原則として認定調査を受けることになり(まだはっきり決まっていませんが、認定調査を受けなくてもよい場合もあります)障害程度区分2以上の人はケアホームに入居するという考え方になります
グループホーム、ケアホームの利用料は、家賃や光熱水費の他に、障害程度区分やグループホーム所在地によって違いますが、1日116円〜594円を負担することになります。
(グループホームの個別減免)
Q19:グループホームに住んでいますが、個別減免の対象になるのはどのような場合ですか?
A19:自立支援法には減免の仕組みがありますが、申請をしないと減免が受けられないので気をつけてください。グループホームの個別減免は、原則としてはグループホームに住民票を移しており、市町村民税が非課税で、かつ預貯金が350万円以下の方が対象となっています。ただし、家族と同じ住所であっても、独立した世帯として個別減免の対象としている市町村もありますので、確認してみましょう。
(自己負担)
Q20:負担上限額や実際の負担額を施設から言われましたが、どうしてこの額になるかわかりません。でも質問しにくいのですが…?
A20:負担上限額や実際の負担額は、それぞれの状況によって違いがあります。自分の負担額について、市町村の窓口か身近な支援者に質問しましょう。納得できるまで聞くべきです。
(同意書)
Q21:申請手続きに行ったら、同意書を書くようにいわれました。同意書は必ず必要な書類なのでしょうか。
A21:まず何のための同意書かを確認しましょう。同意書があると複雑な手続きを簡便にできる場合もありますが、納得できない時に同意書は出さなくてもよいのです。「同意書を出せば安心です」と説明されることがあるようですが、必要な書類を揃えれば、同意書は必要ありません。また、必要のない同意書を提出してしまった場合には、同意書を返却してもらうこともできます。
(負担軽減)
Q22:施設からの請求書が届きましたが、負担額に驚いています。この負担を続けることは難しいと思います。これまで減免の制度を使用していませんでしたが、今からでもその制度を利用できるのでしょうか?
A22:自己負担を抑えるには、住民基本台帳上の世帯分離をする方法があります。本人のみの世帯となれば、世帯の収入が年金と工賃収入、福祉手当になる場合が多く、負担上限額が低くなる可能性があります。また、この3年間だけは社会福祉法人減免が利用できる場合がありますから、さらに利用料を減らすことができます。これらの方法は、障害者としての権利と考え、堂々と活用しましょう。
もちろん、今から申請することも可能ですが、申請しなければ減免は受けられませんので、ご注意ください。
(世帯分離)
Q23:世帯分離をすると利用者負担額が減免されると聞きましたが、住所を移すのは親として淋しい気がしてちゅうちょしてしまうのです。
また、住所を移す(世帯分離も含め)と税控除に不利と聞きました。本当ですか?
A23:自立した大人としていずれ、親と離れて暮らすことは自然なことです。住所が分かれても親子であることには変わりなく、ご本人の自立生活のために何が大切かをもう一度考えてみてください。
ただし、世帯分離をすれば必ずメリットがあるとは限りません。税法上のことや健康保険はどうなるか、公営住宅に住む場合続けて利用可能か、住む場所が変わる場合市町村の福祉手当の額が減るなどのデメリットがないか、よく確認しましょう。
なお、所得税の扶養控除については、世帯を別にしても、他に変更がなければ基本的に変わりませんが、同居特別障害者については、住む場所が変わり「同居の常況」でなくなれば、同居以外の特別障害者となり、控除額が少なくなるケースがあります。
(預貯金額の確認)
Q24:利用者負担の減免手続きをしようと思ったら、預貯金の通帳を見せなさいといわれました。納得できないのですが。
A24:預貯金の調査については市町村でかなり対応が違うようです。年金の入ってくる通帳の最終ページだけでいいというところもあります。多くの人の通るところで通帳の提示を求められたら、プライバシーの守られるところで見ていただきたいというくらいの権利主張はしたいものです。
(工賃収入)
Q25:個別減免をしても上限額が高いのは工賃が高いからでしょうか。
A25:確かに現在の個別減免の計算式では、月額工賃が高い方は上限額が高くなってしまいます。これは、工賃からの控除額が3、000円のみだからであり、これでは就労意欲をそぐものになってしまいます。障害関連の各団体からは、国に対して工賃控除額を年間288、000円(2006年3月までの授産施設等の工賃控除基準額)にしてほしいという申し入れをし、市町村民税非課税世帯に属する方のみですが、今年10月から入所施設と通所授産施設については実現することとなりました。また必要経費として65万円を認めている市町村もあります。皆で、さらに働きかけていきましょう。
(社会福祉法人減免)
Q26:社会福祉法人減免を受けるにはどうしたら良いですか。
A26:サービスを利用する事業所に社会福祉法人減免制度を実施しているかどうかをまず確認してみてください。実施できるのは原則として社会福祉法人ですがNPO法人でも可能な場合もあります。
また、あなたの受給者証に、社会福祉法人減免対象者であることが記載される必要があります。対象となるには、世帯の所得区分が「低所得1」または「低所得2」で、収入と預貯金に以下の要件があります。手続きは市町村の窓口となります。
単身世帯
2人世帯
3人世帯
収入基準額
150万円以下
200万円以下
250万円以下
預貯金基準額
350万円以下
450万円以下
550万円以下
社会福祉法人減免が適用されると、通所施設の場合、月額負担上限額を7500円にすることができますので、積極的に活用しましょう。
(自立支援医療)
Q27:自立支援医療を利用していますが、いろいろな事情で通院先を変えることにしました。どうしたらよいのでしょうか。
A27:役所での変更申請の手続きが必要です。新たな受給者証が届くまでの期間の対応については、新たに受診する医療機関や薬局と相談してみましょう。市町村によっては変更申請の写しをもって新しい受給者証の替わりとして認めているところもあります。
(上限管理表の紛失)
Q28:自立支援医療の受給者証、上限管理表を紛失してしまいました。どうしたらよいのでしょうか。3割負担になってしまいますか。
A28:再発行してもらえますから、大丈夫です。市町村の窓口でどのような手続きをすればよいか、聞いてみましょう。
(自立支援医療受給者証)
Q29:自立支援医療の受給者証がA4サイズの薄い紙で使いにくいんですが・・・?
A29:国が示した様式はA4サイズですが、都道府県によっては保険証サイズのところもあるようです。使いやすいものに改善するよう働きかけてみてはいかがでしょうか。
(市町村の単独減免)
Q30:市町村によっては1割負担をとらないところもあると聞きましたが本当ですか?
A30:本当です。経過措置ではありますが、横浜市は市民税非課税世帯は全額市が負担(入所施設を除く)していますし、東京都もホームヘルプサービスに限定して、市町村民税非課税世帯の負担を3%に減額しています。こうした取り組みは額の大小や内容に差異はあっても、全国の市町村に広がっています。あなたの市町村にも働きかけてみてはいかがでしょうか。
(就労支援)
Q31:私は何回も一般企業で働きましたが、長続きしませんでした。人間関係がうまくいかなかったり、手が遅いと怒られたりしました。今の作業所は就労移行支援の事業所にすると所長さんは言っています。私は企業で働くことを望んでいません。このままでは通うところがなくなってしまいます。どうしたらよいのでしょうか。
A31:自分の通っている作業所が今後どのように進んでいくのか、利用している人たちが考え、決定に参加する権利があります。自分がどのように作業所を利用したいと思っているのか、いっしょに働く仲間がどう考えているのか、話し合い、作業所の運営に自分たちの意見を反映できるようにするべきです。
3.地域生活支援事業に関すること
(地域生活支援事業)
Q32:地域生活支援事業って何ですか。
A32:地域生活支援事業は、自立支援法に基づく市町村等がおこなう事業です。
地域生活
支援事業
相談支援 日常生活用具
移動支援 地域活動支援センター
コミュニケーション支援 福祉ホーム 等
自立支援給付(介護給付、訓練等給付)との違いは、「お金の出どころと出し方」です。地域生活支援事業に対する国の財政負担は、裁量的経費といって予算の範囲内での補助となります。しかも地域生活支援事業すべてをまとめて「統合補助金」として市町村に補助され、どの事業にどれくらいの配分をおこなうかも市町村に委ねられているために事業内容に格差が生まれることになります。応益負担や障害程度区分を適用するかどうかも市町村が決めます。
(小規模作業所)
Q33:小規模作業所や共同作業所は、地域生活支援事業の地域活動支援センターにならなければいけないのですか?
A33:必ず地域活動支援センターに移行しなければいけない訳ではありません。
条件をクリアして就労継続支援事業など、自立支援給付に位置づけられた施設へ移行することもできるし、現在の作業所のままという選択肢もあります。
ただし、自立支援給付の事業へ移行すれば応益負担の対象となります。また、現在の作業所の運営費が、都道府県や市町村の単独制度で補助されている場合は、その補助金が今後どうなっていくのかという問題もあります。
(小規模通所授産施設)
Q34:小規模通所授産施設はどうなりますか?
A34:小規模通所授産施設の国庫補助は2011年度までとなり、その後は廃止されます。それまでの間に新体系の事業へ移行することが必要となります。
(移動支援事業)
Q35:知的障害者や視覚障害者のガイドヘルプは、地域生活支援事業へ移行すると今までのようには使えなくなると聞きましたが、本当ですか? 利用料は1割負担ですか?
A35:ガイドヘルパーの派遣は、9月までは介護給付の中の「外出介護」という名称で支給決定されていて、応益(定率)負担となっています。10月からは地域生活支援事業の中の「移動支援」として位置づけられます。地域生活支援事業は市町村が主体となって行なう事業のため、利用の手続きやサービス支給量、自己負担などは市町村が独自に定めることになっています。これから詳細を検討する市町村が多いと思われますので、早めの要請が必要かと思います。
(手話通訳)
Q36:これまで無料で派遣されていた手話通訳も、これから1割負担がかかるのですか?
A36:手話通訳や要約筆記者の派遣は、10月から地域生活支援事業の「コミュニケーション支援事業」となります。ガイドヘルプ同様、利用の手続きやサービス支給量、自己負担などは市町村が独自に定めることになっています。
(日常生活用具)
Q37:日常生活用具は10月からどうなるのですか?
A37:日常生活用具も10月からは地域生活支援事業になります。種目は国の要綱等で定められますが、やはり自己負担等は市町村が決めることになります。
(ストマ用装具)
Q38:ストマ用装具は10月から補装具ではなくなると聞いたのですが?
A38:補装具種目見直しによって、ストマ用装具は日常生活用具となりました。ただし、9月30日までに申請が受け付けられたもの(ストマ用装具以外の補装具も含め)については、自立支援法の1割負担ではなく、旧法による補装具として給付してよいこと、また現行制度同様6ヶ月分の一括交付を受けることも可能であると、国は説明していますので、市町村の窓口で相談して下さい。
(市町村単独事業)
Q39:私の市では、これまで支援費の他に、市の単独でガイドヘルパーが派遣されていましたが、自立支援法になるとどうなってしまうのですか?
A39:市町村の単独事業については、この機会に市町村が見直しを図ることが予想されます。都道府県の単独事業も同様ですが、市町村などに対して、単独事業の継続を求めていくことも重要となります。
4.障害福祉計画について
(障害福祉計画)
Q40:障害福祉計画って何ですか? 私たちが利用できる資源やサービスにどんな影響がありますか?
A40:障害福祉計画は、すべての市区町村ごとに、むこう3年間(2006年度から2008年度まで)のホームヘルプやケアホーム、生活介護や就労移行支援事業、施設入所支援などの目標量を決めて、それをもとに計画的に整備をすすめていこうとするものです。その地域のニーズに応じた必要なサービスの種類と数値がこの計画のなかにきちんと盛り込まれないと、かえって社会資源の総枠を固定してしまうことにもなりかねないことが心配されます。なお、市区町村ごとの計画の数値については、都道府県段階で調整がはいることにもなっています。
(意見反映)
Q41:計画って、大切なんですね。誰がどのように作るのでしょうか? 私の意見はどうしたら反映できますか?
A41:市町村の障害者施策推進協議会(障害者基本法に基づくもの)や、新たに策定委員会などを設置して計画策定をすすめることとなっています。この検討の機関には、障害者団体や関係者の代表複数が委員として参画すること、また、誰でも希望すれば会議を傍聴できるようにすることが大切です。委員となった人たちがみんなの立場にたって活動できるように、委員との懇談や学習の機会を積極的につくっていきましょう。計画策定にあたっては、障害者のニーズを適切に把握することが求められていますので、アンケートやヒヤリングなどの実施を、市町村に要望していくことも必要です。
(基本指針)
Q42:障害福祉計画には国の基本方針があると聞きましたが、国はどんな考え方を持っているのですか?
A42:国の基本的な考え方は、@立ち遅れている精神障害者などに対する訪問系サービスの充実を図り、全国どこでも必要な訪問系サービスを保障、A小規模作業所利用者の法定サービス移行等を推進することにより、希望する障害者に適切な日中活動サービスを保障、Bグループホーム・ケアホームの充実を図るとともに、自立訓練事業等の推進により、施設入所・入院から地域生活への移行を進める、とされています。
(数値目標)
Q43:障害福祉計画には数値目標が掲げられていますが、どんな内容なのでしょうか。その数値目標は、障害のある人の思いや願いに添ったものなのでしょうか?
A43:国は、計画の見込み量の算定にあたって、次の数値目標をしめしています。@2011年度までに、現在の入所施設の入所者の1割が地域生活に移行することをめざす、A2012年度までに、精神科入院患者のうち7万人を退院させていく、B2011年度までに、福祉施設から一般就労に移行する者を現在の4倍以上とし、就労継続支援事業の利用者の3割はA型(雇用型)をめざす。なお、就労関係はさらに詳細な内容での目標設定もだされています。
国の考え方では、施設や病院から地域に出ていくこと、福祉施設から就職していくことに数値目標の比重がひときわ大きくなっていることがうかがえますが、これを機械的にあてはめて、障害のある人たちの不安を高めたり、ニーズにそぐわない状況となってしまっては本末転倒です。一人ひとりの生活の安定と夢や願いをわが町ではこんなふうに叶えていこう、それが計画策定においてもっとも留意されるべき点ではないでしょうか。
(基盤整備)
Q44:私の住む地域には、障害者の施設は何もありません。この計画によって、私の近くにも施設ができるなどの希望が持てるのでしょうか?
A44:あなたやあなたの周りの障害のある人たちが、今もっとも必要としていること、これからこんなふうにこの町で暮らしていきたいということを、計画のなかに盛り込めるようにしていくことが大切です。こんな施設やサービスをこんなときに利用したい、という具体的な内容をまとめて、自治体や計画策定委員会に要望としてだしてみましょう。あなた一人だけではなくて、いっしょに話し合い行動できる仲間をふやして働きかけを続けていきましょう。また、どんなに素晴らしい計画があったとしても、その内容が実現されなければ「絵に描いた餅」になってしまいます。計画が出来てからも、その実質化を図るための継続的な働きかけが必要です。
5.職員の皆さんへ
(退所の相談)
Q45:利用者負担が払えないという理由で3月から4月にかけて施設を辞めて在宅になった人が何人もいました。4月分の請求書をみたご家族から、利用料の軽減がなくなったら子ども(利用者)を辞めさせるしかないという相談もうけました。職員としてとても切ないです。
A45:利用者負担を理由に施設を退所したりサービス利用を手控える事態が激増していることは、全国団体の緊急調査(全国社会就労センター協議会、ゼンコロ、きょうされんなど)などで具体的に明らかになっています。制度変更により不本意な退所や利用抑制がおきているという点に、自立支援法の大きな問題点があるといえるでしょう。この事実をひろく社会にアピールして解決策を求めていく行動が、今とても必要です。
同時に、退所せざるを得なかった人たちが、在宅生活が長引き、社会との交流が途絶えたり、日々の生活の張り合いや目標が見失われていく状況を放っておくことはできません。福祉事務所や生活支援センターなどに連絡をとり、これからの生活を支える手立てを話し合う場を早急につくっていきましょう。関係する人たちで、実態を共有し、地域で何ができるかを考え合うなかで、次への手がかりを見いだすこともできると思います。
なお、利用者負担に関して独自の軽減策を講じている自治体が増えてきています。法をすぐに変えることは難しくても、地域のなかで障害のある人の不利益を少なくしていくために出来ることはたくさんあります。地方議会への請願行動なども各地でひろがっていますので、情報交換をしながら、わが町を良くするとりくみを当事者や親ごさんたちを励ましながらすすめていきましょう。
(日額化の影響)
Q46:4月から日払い方式となったため、休んだ人の状態確認のための家庭訪問や、通院の支援が支援費の対象からはずれてしまい、これまでと同じような支援は提供できないと施設長からいわれました。その一方で、少々熱があっても、施設に迷惑をかけてはいけないと無理して通わせようとするご家族もいます。納得がいかない日々です。
A46: 3月までは施設へ在籍している人に対する支援費は月払いでしたが、国は1割の定率負担(応益負担)を導入し「利用しないときまでご負担いただくわけにはいかない」と日払い方式に変えたため、ご質問のような事例が発生しています。
日々の調子に波がある人、家庭の状況により通所に困難をかかえている人など、一人ひとりの状況に応じて施設職員が信頼関係を築きながら生活が安定できるように、施設に来ていない時でも様々な支援を継続していくことが必要な人がいます。また、職員会議や専門性を高める研修、授産施設の作業の段取りや準備など、利用者への直接支援ではないけれど欠かすことのできない職員の業務はたくさんあります。
日払い方式が、障害のある人たちの支援にとって本当に妥当なあり方かどうか、現場での変化を整理検証して、問題提起していくことが必要ではないでしょうか。あわせて、個々の支援に関する課題は、地域の関係者によびかけて、利用者への不利益や不安をできるだけ少なくしていく方策を話し合っていきましょう。
(上限管理)
Q47:グループホームで上限管理が加わりました。事務量が大変増えました。それに、他のサービス利用全てを知ることは入居者のプライバシーの問題があるのではないでしょうか。
A47:上限管理事務をすることにより、入居者の方がグループホーム以外のサービスをどんなふうに使っているか、それによりどのような利用者負担の状況となっているかを把握することができます。生活の基本を支えるグループホームとして大切な役割です。もちろん、入居者ご本人の了解をきちんと得ること、プライバシーを守るという約束をおこなうことが大前提です。また、他の事業者との間でもこの原則を貫くことが必要です。
確かに事務量の増加は大変なものがありますが、入居者の地域生活をトータルに支えていく仕事であるという誇りを持ち、日々の業務にあたりたいものです。あわせて、グループホームも上限管理が加算制度の対象となるよう求めていくことも不可欠です。
(職員の生活)
Q48:公費収入が減り、この4月から給与が削減されました。子どもの学資ローンや住宅ローンの組み替えも必要かもしれないと、先行きの生活不安が募ります。事業運営のためには報酬単価が高い方がよいのですが、報酬額が多ければ利用者負担も増えると思うと、複雑な気持ちとなり、どう考えたらよいかわからなくなってしまいます。
A48:自立支援法は、利用者負担の痛みだけではなく、それを支える職員の生活にも深く及ぶことになりました。あなたのおっしゃるとおり、利用者負担と事業の安定(職員の労働条件)が対立する構図がつくられ、お互いが辛い立場におかれています。そのおおもとには、1割の定率負担(応益負担)制度があります。これを絶えず問題の中心にすえ、利用者や家族とともに制度の改善を求める運動を持続していきましょう。
同時に、事業がたちゆかなくなってしまっては元も子もありません。新事業体系への移行は、自立支援法に具体的に立ち向かう新たな事業のあり方をつくっていくことを求めていると考えましょう。その検討にあたっては、利用者の生活を守ることと職員の労働条件の両立を一体化させながら、制度の水準に身の丈を合わせるのではなく、制度や実践の改善や新たな創造という視点をたずさえて、みんなで難局を乗り越えていけるようにしていきましょう。
(新体系移行)
Q49:新体系移行をどのように考えて進めていけばよいのでしょうか。
A49:移行の際、これまで積み上げてきた支援内容やその理念を組織全体で確認しあい、利用者や地域のニーズをあらためてつかみ直すことが不可欠です。そのうえで、利用者と職員の両方を守るという観点から、思い切って見直すものと新たに取り組んでいくものを検討しましょう。利用者の必要(ニーズ)のために、地域でのネットワークをどうつくっていくことができるか、という視点も重要です。
自立支援法の問題点や矛盾が次々と明らかにされているところです。法の枠組みのなかに現実的な対応をおしこめてしまうのではなく、基本的な問題をおさえながら、新体系への移行を位置づけていくことが大切です。障害のある人たちの本当の思いや願いに寄り添う立場から、職員一人ひとりが自ら事業運営を担う気持ちで意見を積極的に出しあっていきましょう。
(職員として)
Q50:現場は毎日ギリギリの体制でまわっていて、目の前のことをこなすことで精一杯です。4月から実績記録表をつけたり請求書点検などの業務もふえ、一体自分は何をしているんだろうか、このままこの仕事を続けていて良いのだろうかとふと頭をよぎります。
A50: どうぞあなた一人で悩みを抱え込まないようにしてください。
あなたと同じように、障害者福祉の仕事にやりがいを感じ、がんばりつづけたいと思っている人は、職場のなかにも地域にも全国にも大勢います。お互いに発信しあいつながりあうことで、励まされたり、力をもらえることが多くあります。
目の前の現実が厳しいときだからこそ、誰かが行き詰まったときは、他の誰かが手をさしのべることのできる仲間づくりを大切にして、みんなで力を合わせていきましょう。
障害者自立支援法への対応策・JD「一問一答」(第二版)
2006年8月3日
発 行 日本障害者協議会(Japan Council on Disability)
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