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2010年「すべての人の社会」9月号

日本障害者協議会  Japan Council on Disability

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1025日更新

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VOL.30-6 通巻NO.363


巻頭言  独立行政法人移行後の成否

日本障害者協議会理事 福澤 利夫

民間並みの経営改革による効率化を狙いに国立の病院や大学等が独立行政法人化に移行した後の全体的な成否の判断はできないが、少なくとも重度の神経筋疾患やALS等の難病患者が入所している国立病院の療養介護病棟の実態を見る限り、法人化前より悪くなった。

民間並みの改革を進めることに異論はないが、最も肝心なのは顧客最優先即ち、病院の場合は患者最優先の視点が何よりも大事である。しかし、残念ながらこの視点が希薄だと思われてならない。民間企業は自社が提供する製品やサービスに対して顧客の信頼を失えば、競争に負けてやがて倒産し市場から退場せざるを得ない厳しさに常にさらされている。

さて、独法国立病院の場合は患者こそ大事な顧客であり、一応患者のQOL向上を方針にしているが、医師・看護師不足と収支改善を重点とした合理化の方向は患者のQOL低下を招いていて結果的には患者最優先になっているとは言い難い。もちろん、病院現場の医療従事者は多忙のなか薄氷を踏む思いで懸命に頑張ってはいるものの患者の命の安全が脅かされかねない実態にあることを国はご存知だろうか?

民間企業が熾烈な競争を生き抜いて顧客を確保しているのに比べれば、患者は待遇が悪いからと簡単に他の病院へ自由に移動できるほどの受け皿はなく選択の余地は極めて狭い。つまり、国立病院は民間企業のような熾烈な競争原理下にはない。

ただし、民間企業のなかにも競争原理の枠外にある企業がごく一部ある。代表的な業種が、電力・ガス事業であろう。これらの企業は地域的独占状態にあり、顧客が会社を選ぶことはできない。このため、かつて、ある電力会社の経営者は顧客が会社の良否で電力会社を選択することができないので、会社自体が顧客の立場で良質のサービスや高品質の電力供給に最大限の義務を負っていることを忘れるべきでないという経営方針を徹底したことが強く印象に残っている。

国もこのような哲学に徹するべきではなかろうか。国は病院現場の実態を直視して、真に患者最優先の明確な長期ビジョンを確立することが急務と考える。特に、新政権は国民の命を守ることを公約にしているのであるから対症療法でなく抜本的対策を是非積極的に進めてほしい。

音声読み上げ環境に対応した「すべての人の社会」テキスト版を、ご希望の方は以下のアドレスにメールしてください。 office@jdnet.gr.jp


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