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日本障害者協議会 Japan Council on Disability
10年11月20日更新
VOL.30-8 通巻NO.365
やどかりの里常務理事
日本障害者協議会理事 増田 一世
「隣が老人病棟で患者が亡くなると線香をあげる。その線香の匂いが漂ってくると、退院できない自分も精神病棟の中でそんな最期を迎えることになるのかと思う……病院の中庭の桜が春に咲いて、花が散って枝に葉がいっぱい茂って、冬になると枯れ枝になって……それを何回もくり返して、俺は何年後の桜の咲くころに退院できるのかと思うと苦しくて、泣いた」
19年間の長期入院を経てやっと退院した1人の精神障害のある人が、退院後20年近くたってやっと語ったことだ。辛いことはなかなか語れなかった。でも今は自分に自信もついたから、辛いことも話せるようになったと……。
そしてこの夏、彼は内科の疾患を発症し、入院治療が必要となった。彼の主治医や支援者たちは、何とか市内の総合病院での治療を受けられないかと奔走した。しかし、精神疾患をもつ彼を受け入れてくれる医療機関は見つからず、やむなく県内の50キロほど離れた病院に入院することになった。家族も遠方に暮らし高齢化しているため、遠い病院にたびたび訪れることはできない。支援者や同病の仲間たちが交代でお見舞いに出かけたり、手紙を書いて、彼を励ましている。
彼は仲間の訪問をことさら喜び、○○も○○も来てくれた、うれしかったと話してくれる。精神的にはとても安定し、落ち着いた療養生活を送っている。その姿を見て、ホッとする半面、なぜ精神疾患があることを理由に自分の暮らす町で療養できないのかと、悔しい思いがこみ上げてくる。
現在、障害者権利条約や障害者自立支援法訴訟団が国と交わした基本合意文書に基づき、障がい者制度改革推進会議や総合福祉部会での議論が進められている。障害のある人のいのちが守られる法制度の確立、あらゆる形態の労働を認め、働く権利を実現すること、自らが希望する教育を受ける権利等々、障害や疾病ゆえにあきらめたり、我慢したりしなくてすむ社会の実現が待たれている。
そのためには、まずは国の責任で実態を明らかにし、どこで誰と暮らすのかを選択できる地域にしていくことだ。私たちは具体的に政策提言する力を蓄え、現場の中で、障害や疾病のあることで生活に困難を抱える人たちの日々の暮らしの中で気づかされることを政策に結び付けていくことが求められている。
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