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日本障害者協議会 Japan Council on Disability
11年2月17日更新
VOL.30-11 通巻NO.368
日本障害者協議会理事 赤平 守
「人生は教訓に満ちている、しかし万人にあてはまる教訓はひとつもない、殺すな、盗むなという原則でさえ絶対ではないのだ」。
昭和に生きた大衆文学の巨匠、山本周五郎の代表作の1つ『赤ひげ診療譚』の一節、主人公、小石川養生所の医師、赤ひげこと、新出去定(にいできょじょう)のことばです。
ご存知のかたも多いかもしれませんが、山本周五郎は徹底して「人間」を描いた作家です。また、彼の作品の多くには社会的弱者が多く登場します。庶民の暮らしとは切っても切り離せない貧困の問題はもちろんですが、障害ということばこそ使わないものの、身体障害だけでなく、知的障害や精神障害、発達障害を容易に想像できる人々が数多く登場するのも彼の作品の特徴かもしれません。
そしてそんな人々を見つめる彼の眼差しからは、いわゆる「生きにくさ」を抱えた人々の中にこそ、人間らしさが育まれていくのだという、信念のようなものが感じられます。それは彼自身が高学歴とは無縁の貧困家庭に育ち、12歳で東京・木挽町の『山本周五郎商店』で住み込みの徒弟から独学で這い上がらねばならなかったこと、作家となった後も権威と権力を嫌い、直木賞をはじめとして終生、文学賞の類を辞退した唯一の作家であるというエピソードからも窺い知ることができます。
奇しくもこの原稿を書いている時(1月24日)、菅直人首相の施政方針演説が始まり障害者基本法の改正を今国会で提案すると明言しました。しかし、この1年の民主党の変化を思うとまた山本周五郎のことば「法律の最も大きい欠点の1つは、悪用を拒否する原則がないことだ」(寝ぼけ所長)や「病気にかかるのは人間ばかりでない。世の中も病んでいるときがある」(ながい坂)といったことばが思い起こされます。
昔も今も世の中は絶えず動き変化が求められています。しかし、変化が多ければ多いほど、その変化についていけない人々が生み出されていくことも現実なのだと知らねばなりません。
最後に再び『赤ひげ診療譚』の新出去定のことばを紹介します。「見た眼に効果のあらわれることより、徒労とみられることを重ねていくところに、人間の希望が実るのではないか」。
私にとって、今一番こころに染入ることばとなっています。
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