日本障害者協議会 Japan Council on Disability
08年5月13日更新
2008年5月13日
日本障害者協議会
代表 勝又和夫
本年4月より施行された後期高齢者医療制度は、施行後1ヵ月余にしてさまざまな矛盾や問題点が露呈し、与党の中からも凍結や抜本改正を求める声が持ち上がっています。周知のとおり、後期高齢者医療制度は、高齢者の医療費が膨らみ続けているなか、2005年の「郵政選挙」での自民党の圧勝を受けて、その勢いに任せるようにして医療制度改革関連法案の成立に伴って施行されたものです。その背景や考え方、成立の過程は、障害者自立支援法に極めて酷似したものであります。
この新たな制度は、原則として75歳以上の高齢者を対象にし、健保や国保から独立させ、高齢者が支払う保険料と、公費、被用者組合からの拠出金によって運営するとされています。75歳になった段階ですべての人がこの制度へ加入し、保険料を払うことになりました(年金からの天引き)。世帯単位で見たときに、保険料が上がるケースが少なくなく、年金生活の高齢者には大きな打撃となっています。
さらに主治医制度が導入され、その主治医が慢性疾患を総合的、計画的に診療し、月額6,000円の定額報酬を受け取るというしくみになりました。高齢者の中には複数の慢性疾患を持っている人が少なくなく、これまで複数の病院に行き専門的な治療を受けることができていました。しかし主治医制度によって、医療の選択権が奪われ、定額報酬により、必要な治療や検査さえも受けられなくなる事態が現実のものとなっています。
また、ターミナルケアについても、病院から地域へと誘導していく考えがとられていますが、耳障りはよいものの、これは財政を抑制するための政策で、地域での受け皿が確立されていなければ、悲惨な状況を生み出していくだけです。
そして、この後期高齢者医療制度に、65歳以上の一部の障害者も組み込まれてしまいました。必要な医療を受けながら、人間としての誇りを持って、生を全うしたいと願う障害者の思いを踏みにじるものとしか言いようがありません。
一昨年、国連では障害者の権利条約が採択されましたが、その条約の礎となった1981年の国際障害者年の基本指針ともなった“国際障害者年世界行動計画”では「社会がその構成員のいくらかの人々を閉め出すような場合、それは弱くもろい社会なのである」とあります。今、日本の医療と福祉に突きつけられていることは、まさにこのことなのです。
上記の認識に立ち、本協議会として、後期高齢者医療制度の即刻な廃止を強く求めます。