日本障害者協議会 Japan Council on Disability
08年12月17日更新
2008年11月25日
厚生労働大臣 舛添 要一 様
日本障害者協議会(JD)
代表 勝又 和夫
2009年1月1日から、「産科医療補償制度」の導入に向けた検討が続けられています。日本障害者協議会(JD)は、この制度には以下に指摘するとおり、多くの課題があると考え、抜本的な見直しに向けての再検討を求めます。
第1に、同じ脳性まひという障害でありながら、補償を受けられる子と受けられない子とがある、という格差が生じることは断じて許されません。
分娩が原因で発症した脳性まひ児に対しては、総額3000万円の補償が支給され、先天性などの場合にはまったく補償されないという格差が生じることは、とうてい納得できるものではありません。脳性まひがある人の生きることの厳しさや、脳性まひ児を育てる家族の負担の大きさは、原因によって変わるものではありません。「障害」があることへの支援は、原因によるのではなくニーズに応じて提供されるべきだというのが、JDの一貫した主張です。原因で補償が大きく異なるこの制度は、認められるものではありません。
第2に、この補償制度の保険システムにも納得できない点が数多くあります。「産科医療補償責任保険」は分娩機関が加入する保険でありながら、出産育児一時金から3万円を、出産する本人の承諾も得ずに病院等に支払い、掛け金とする制度設計となっています。さらに、公的医療保険から支出される一時金を、民間の損害保険会社が運用することや、日本医療機能評価機構が制度を運営することにも疑問が生じます。
本来、こうした補償制度は、税金による社会保障制度の枠組みのなかで実施すべきと考えます。また、公的な財源を導入するからこそ、その制度の運営や運用は公平性・透明性が担保される組織・システムでなければなりません。
第3に、この制度の成立過程が、立法府での審議もないままに進められたことにも疑問を抱きます。このような経過からは、この制度が産科医療機関や分娩機関の被訴訟リスクを回避するためのものではないか、とも捉えられかねません。
産科医不足などの厳しい現実については十分理解できますが、そうした状況を改善するためには、本来、産科関連の診療報酬を引き上げるなどの措置が検討されるべきです。出産の安心を保障し、障害児やその家族への補償を掲げて成立した制度ですが、本来の目的や今後の運用のあり方に多くの疑問を抱かざるをえません。
以上、産科医療補償制度の実施・運営にあたっては、根本からの再検討を求めたく、意見書を提出させていただきます。