「目の不自由な人」という(無難かつ不自由な)表現で括られることの多い視覚障害者ですが、「点訳ボランティア」や「朗読ボランティア」や「拡大写本ボランティア」があるように、目の見えない人と弱視の人とでは必要としていることが違います。
目の見えない人の中でも、弱視の人の中でも、必要としていることの度合いは人それぞれ違います。気軽に接し、「何かお手伝いできることはありませんか?」と率直に聞くのが一番です。あなたの一声で、とても安心できます。
ただ、そこまではわかっていても、実際に何かお願いされたとき具体的にどうすればいいのか知らないことで、声をかけるのをためらっているかたもいると思います。そこで、こんなときにはどうすれば?を紹介してみました。ここに記した以外でも、いろいろあると思います。あなたからのアドバイスもよろしく。
「見える人」である、あなたのほうから先に声をかけましょう。目の見えない人にとっては、声をかけられるまで、あなたはそこにいないのです。
いきなり腕をつかんで引っ張ったりしないで、最初に一声かけましょう。白い杖の反対側に立って腕を貸し、相手の半歩前を歩きましょう。白い杖をつかんだり、手を引っ張ったりするのは禁物です。
あなたのヒジの少し上に相手の手を導いた上で歩き出すと、常に安全な位置が得られ、あなたの体の動きで進む方向がよくわかります。
身長が違い過ぎ、あなたの背のほうが高いときにはヒジの下を、低いときには肩を貸しましょう。
斜めに近づくのは危険です。段差に向かって必ず直角に進みましょう。手前で歩行をゆるめ、昇るか降りるかを告げ、一段先を歩きましょう。
ドアと屋根の縁に相手の手を導きながら説明すると、車の向きや屋根の高さがわかるので、頭を打たずに乗車できます。
必ず断わってから離れましょう。その際、相手の手を柱か壁などに接触させるか、椅子をすすめましょう。手がかりがないと転んでしまうかもしれないからです。また、戻って来たときにも、必ず声をかけましょう。
椅子の背もたれかヒジかけに手を導きましょう。椅子のシートの先端に相手の方のヒザが軽く触れるように誘導するのも、安全に腰をかけられる方法です。
料理の名称と内容を説明しましょう。
食器の位置は時計の針の位置で示すといいですね。快適な時間を共有し続けることができるよう、最後までフォローをお忘れなく。
肩にちょっとふれてからとか、相手の名前を呼び、自分の名前を名乗ってから話しかけましょう。
特に知り合って間もない初めの頃は、まだ声と名前が一致していませんので、誰に話しかけられているのかわかりづらいからです。
以上のような様々な場面でのサポートに加えて、心に留めてほしいことがあります。
視覚障害者といっても様々です。見え方で分けると、弱視と全盲がいます。目だけの障害の場合と他の障害を併せ持つ場合もあります。
弱視とは、矯正しても0.3以下程度の視力しか持たないか、視力があっても視野が非常に狭い人をいいます。その見え方は、夜見えにくい場合や、まぶしいと見えにくい場合など、種類や程度も様々です。
全盲には、光がわかる場合や、光が一切わからない場合があります。いつからの障害なのか、生まれつきなのか、学童期に視力を失ったのか、社会に出てから視力を失ったのかでも変わってきます。これは弱視でも同様です。
相手の障害の状態や時期などを知っておくことは、より身近なサポートにつながります。
どのようなサポートを期待しているかは、見え方や併せ持つ障害、そして受けた教育やリハビリの状況によって変わってきます。一人ひとり違います。
例えば、全盲で、併せ持つ障害がなく、盲学校での教育を受けていれば、点字はほぼ問題なく使えます。ところが漢字の知識はほとんどありません。
一方、大人になってから失明した場合や手の感覚障害がある場合、点字を身につけるのはとても大変です。
大人になってから失明した場合、手の感覚障害がないとしても、皮膚の感覚から鋭敏さが失われているのは致し方ないことだからです。また、元々あったはずの手の鋭敏さが失われたという意味では、これはこれで 「感覚障害」に違いありません。
弱視では、視力が低くても視野がある程度でも広ければ、文字を大きくすることで読むことができます。ところが視力があっても視野が狭い人は、本を読む上での不自由は少ないのですが、広い範囲から探すのは大変困難です。また、遠くは見えなくても目を近づけるとある程度なら読める場合もあります。
全盲、弱視それぞれに、その人が苦手な部分のサポートが必要になるわけです。