「ボランティア」とは何かについては、これこそがボランティアだ!などという、「中央国語審議会」認定の確固たる定義が確立されているワケではありませんから (笑)、この論議を始めたら、それだけで議論百出になり収拾がつかなくなってしまいます。でも、細かいところでは違っているかもしれませんが、ボランティアとはおおよそこういうものという、合意のようなものはあると思います。同様に「パソコンボランティア」にも、何らかの一般的な合意はあります。
では、埼玉県坂戸市の社会福祉協議会(社協)が認識していた「パソコンボランティア」とはどういうものだったのでしょうか。坂戸社協が1998年6月に発行した「ボランティアセンターだより」で「パソコンボランティア募集」が掲載されました。こんな文面でした。
「パソコンボランティア募集」
ボランティア活動も今やコンピューターネットワークを活用し、情報の収集をしたり点字や拡大写本などの活動にもパソコンが必需の時代となっています。日頃のボランティア活動の大きな助けとなっています。
そこで、市内のボランティアが集まってパソコン教室を行いたいのですがコンピューターの設定やネットへの接続などを指導してくださるボランティアをさがしています。初歩的な操作方法も教えてください。
皆さんはこれを読んで、どんなことをするボランティアだと思いましたか?
私は、アレレっと思いました。何か私のイメージしていた「パソコンボランティア」とは違うぞ?と。そんなワケで、まずは社協の「坂戸市ボランティアセンター」に問い合せてみたんです。すると、次のような内容ということが判りました。いわく、
これからのボランティア活動にはパソコンの活用が必須だ。ついては、ボランティアをしている人にパソコンの使い方を、ボランティアで教えてくれる「パソコンボランティア」募集!
平たく言えば、パソコン教室の講師をボランティアでしてほしい!というものでした。
では、私が抱いていた「パソコンボランティア」のイメージとは、どのようなものだったのでしょうか。
これについては、1998年8月、大阪で行われた「全国障害者問題研究会」(全障研)全国大会での「パソコン・情報アクセス」特別分科会で、埼玉県立越谷総合技術高等学校情報技術科教諭であり、「日本障害者協議会(JD:Japan Council on Disability)『情報通信ネットワークプロジェクト 』(JDプロジェクト)」のメンバーである田中克典さんが、「パソコンボランティアの現状」というレポートで見事に定義しておりますので、紹介してみましょう。
パソコンボランティアとは、パソコンを使う(主に)障害者のヘルプの声にこたえ、サポートするボランティアのことである。パソコンを使っている中で問題が起きた障害者のもとへ出かけていき、その問題を解決しようとするものである。
でも、今回初めて「パソコンボランティア」にはこういう意味もあったのかと知った人には、これだけではピンとこないかもしれません。そういうときには同じことを別の表現ではどう言っているかからアプローチすると案外わかりやすいものですので、田中克典さん、通称カッチンさんの ウェブサイト(いわゆるホームページ)ではどう記されているかを見てみましょう。
パソコンを使っていれば必ずわからないことにぶつかる。自分で調べてもわからないことも結構ある。そんな場合、わかる人に聞くのがいちばん!!
というわけで、パソコンを始めたい人、使っていて困っている人(特に障害を持つかた)の住むところまで出かけてサポートしていこうというのが「パソコン・ボランティア」。パソコンの使い方から入力機器の改造まで頑張っているところです。
えっ、カッチンが何から何までわかるのかって・・・ それは無理です。カッチンが対応できないときには、パソコンボランティアのネットワーク(メーリングリスト)を通して、いろいろと教えてもらうのです。
ぜひ、みなさんもパソコンボランティアとして活躍してみませんか?
こんなところが、「パソコンボランティア」の意味合いなんですね。どんな問題でも分からないことがあったときには、身近に教えてくれる人がいてほしい。パソコンでもそうだということです。出掛けるのが困難な人のところにはこちらから出向くということです。