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パソコンでボランティアって?

(パソコンボランティア入門)

パソボラ参加での色々

1.パソボラの形、色々

先ほども述べましたが、ボランティアグループの一覧表などを眺めると様々のボランティアグループが載っています。こうした一覧表を見ることで、自分にもこれなら出来るかもしれないという、自分の中の可能性に出会う人もいるでしょう。

同様に、「パソコンボランティア」でも、こういうことなら参加できる、お手伝いできるという項目を、出しあっておくといいですね。

パソボラへの依頼として多いのが、パソコンを教えてほしいという要望です。私たちの坂戸パソコンボランティアでも、「視覚障害者のためのパソコン体験講座」といったパソコン体験講座を開催しています。

でも、こういった「体験講座」は「待ち受け型」です。確かに複数の人に同一の内容を教えることができるという意味ではこういった体験講座は有用なのですが、体験講座の会場に来ることができる人にしか参加できません。「出前型」のパソコン講座があってもいいと思います。

ちなみに、私が参加していたパソコン通信「マスターネット」の[新人歓迎!(WELCOME)]ボードでは、障害のため外出がままならない人のところには「出張WELCOME」と称してオフライン・ミーティング(電話回線を経ない直接の交流)を出前して、そのついでに設定のサポートもしておりました。外出できないなら、その人のところで開催すればいい!という発想です。

これなども「パソコンボランティア」という言葉が生まれる前からの動き方でしたが、このような、パソコンを手に入れたものの使い方がわからなくて困っている人へのサポートや、これからパソコンを買おうとしている人の相談に乗るのは、すぐにでも出来ることだと思います。「パソコン・リサイクル」も、リサイクル活動の一環としてやれそうですね。

2.仲間づくりでの色々

サポート出動でも、一人で行くより複数で行ったほうが考えが及ぶということがありますし、問題の発見も早いものです。パソコンと周辺機器を接続するにしても素速くできます。以前よりは軽くなったとはいえ、パソコンも周辺機器もそれなりの重さがありますし、それら全てを梱包を解くところから一人で行なうとなると、ちょっとしたはずみで腰にきます。パソボラに出向いた先で動けなくなったらシャレになりません。

それだけではなく、パソコンを箱から出すといった単純な作業ならともかくも、問題が起こったときの解明では原因発見のため集中が必要なことだってあります。

そういうとき一人だと相手に孤独を感じさせてしまうかもしれません。相手だってせっかく来てくださったボランティアさんに何も言わないでいるのは失礼かとも思って、話題を途切れさせまいと話しかけたりするものです。

前にも述べましたように、「相手があってこそのパソコンボランティア」ですから、ゆっくり話相手になりたいところですが、集中が必要なことだってあるのです。パソコンボランティアをするからといって人と喋るのが苦手な人だっていますし、そういうときには二人で行けば、一人は作業、もう一人はパソコン相談やお喋りと、分担できます。身体の健康と互いの心の健康のため、サポートには、できるだけ複数で行きましょう。

という個別のサポートに対応する前に、実は大切な役割がありまして、それが「コーディネーター」です。依頼されたサポートがスムーズに進むよう調整し、課題の進捗状況を追いかけるのが役割です。

実際のサポートにサポーターが出かけるためにはサポーターの募集が必要ですが、ただ闇雲にサポーター募集を掲げても応募のしようがありません。依頼者が何を依頼したいのか、何を依頼しているのかをコーディネーターがつかむことが先決です。その上でサポーター募集ということになります。

このコーディネーターですが、依頼者との関係で言うと幾つかの段階がありまして、第一はパソボラの窓口としての段階です。

でも、最初から自前でパソボラの窓口を置いておくのは難しいと思います。何といっても常時受付を担当できる人がいなくてはいけませんので、そのことだけでもボランティアの手に余ります。ですから、取り敢えずであったとしても、たとえば社協といった公的なところを窓口としてお願いしましょう。

第二段階は、依頼内容の確認です。最初の窓口を担当した人がパソコンに詳しいとは限りませんので、ここでしっかりと依頼者のニーズをつかんでおくことが必要です。

依頼者のニーズを確認したところで、パソボラメンバーにサポート依頼情報を中継する第三段階に入ります。ここで行なうのは、あくまでも情報の中継であって、「○○さん、このサポート、お願いネ」といった斡旋や手配ではありません。公的な機関においては依頼に応えることが責務ですが、私たちはボランティアです。仕事や家事をしながらボランティアの時間をやりくりしているのです。依頼者に都合があるようにボランティアにも都合がありますので、依頼を受けられないケースも十分に有り得ることです。

では、サポートを引き受ける手が上がるまで待っているのかというと、そんなことはありません。待機中の依頼についてはコーディネーターが再度サポーターを募ります。そして、募っても声が上がらなかったら、依頼者に対してその旨を知らせます。

また、サポートの引き受け手があった案件についても、サポート報告が上がってこなかった場合には、進捗状況を問い合わせます。コーディネーターの役割は、サポート依頼を受け付け、依頼内容を確認し、サポートの依頼を中継し、サポートの経過を追跡し、サポートの終了を見届けることです。

コーディネーターは、直接現地に行くことはできなくても担当することができます。何らかの事情があって外出が困難な人でも可能です。「相互支援の経験は、特に重要な経験として障害者の自立を促す」という指摘もあります(「パソコンボランティア」(前述)より)。

でまあ、サポートの受付を社協にお願いしたとして、コーディネーターさんを選出したとして、残るは肝心の「パソコンボランティア」です。

パソコンボランティアを行なうには、何か特別な技術や資格が要るでしょうか。何かしらの特技や資格を持っているのは悪いことではありませんので、そういった技術や資格をお持ちの人は活動の幅を広げるために用いましょう。でも、技術や資格がなくても、まずは気持ちでやれることから参加できるからこそボランティアなのです。

そうなんです。極端な話、その場に出向くのはオペレーター(操作する人)だけでもいいのです。自分では分からなくても、電話の向こうから分かっている人が確認すべきところを指示してくれるなら、その人の目や手にはなれます。これなら、障害のため出歩くことが難しい人でも外の人へのパソコンボランティアができますね。ITを駆使した“在宅ボランティア”、実に素敵じゃないですか。

なお、実際の「パソコンボランティア」に際しては、無理は禁物です。分からないことや難しいことがあったら、何が分からなかったか、どう難しかったのかを持ち帰って分かる人と相談しましょう。バックには、“ネットワークにつながるパソコンの力持ちたち”がいるんですから、分かったところで、また出かければいいのです。

何時間もかけないと到着できないところに「パソコンボランティア」に行くのなら、無理をしてでも一気に片付けないといけないこともありますが、そんな無理をさせないためにも、各地域をサポートできる「パソコンボランティア」の仲間作りが必要です。私たちが坂戸で行なっている「パソコンボランティア」もそのひとつです。

また、同じ市町村の中であっても、広い地域のところもあるわけですから、身近なところからサポートの声があがるようになることが必要です。大勢のサポーターを発掘し、サポーターを育てることを意識的に進めていきましょう。

3.専門家と共に色々

MS-DOSパソコンの時代、SKL(シフト・キー・ロック)というソフトを自力で開発した坂爪新一さん(脳波マウスの開発者としても知られています)は語ります。「ボランティアには限界がある。継続性、開発に要する費用、医療・リハ関係者との連携が弱い」と(『パソコンボランティア』より)。

パソコンを箱から出して組み立てることや初期設定くらいならパソコンの日常的な使い方のひとつですので難しくありませんが、障害のある当事者の使い勝手にピッタリの入力補助機器の製作となると、「リハビリテーションエンジニア」といった専門家との連携が必要です。

では、そういったことにはタッチできないかというと、実際に自分ではできなくても、こんなことができる専門家がいるということを知っているだけでも役立ちます。日本ではまだまだ足りない専門家との間をつなぐ掛け橋にはなれるのです。

開発者が使用者のニーズを知らないことって、けっこうあります。必要な情報を公開してくれないという、企業秘密(そりゃ商売ですから)の壁もあります。仕事柄、知ってはいるが伝え難い情報もあります。その点、「パソコンボランティア」はお仕事ではありませんので、“サポートの現場で託された使用者の声”の開発者へのフィードバック(橋渡し)が遠慮なくできます。そうなんです。現場でのお手伝いはもちろんありますが、「パソコンボランティア」には「つなぐ」役割もあります。人と人をつなぐのはもちろんのこと、行政やパソコンメーカーといった、人と組織との掛け橋です。

4.制度の活用を色々

ついでながら、「日常生活用具」をご存知でしょうか。障害者が日常生活を営む上で必要なものを支給する制度ですが、この中には、パソコンが含まれておらず、ワープロのみでした…という時代がありました(今からしばらく歴史をたどる文章が続きます)。

その当時は、パソコンを「日常生活用具」ということにして(「日常生活用具として」ではなく「日常生活用具ということにして」)申請するためには、どうしても福祉の現場にいる専門家の助言を得て、認定される書類上の表現にすることが必要でした。現場にいる専門家の立場としては裏ワザ(ある意味、離れワザ)だったので多くを語ることはできない部分につき、こういった“工夫”があったという程度に留めますが、必要があっての工夫ですから、これを堂々と申請ができるような制度の改革が必要だったことは言うまでもありません。

ちなみに、「日常生活用具」の購入に当たっては「指定業者制度」の問題がありました。同じ製品を量販店などで買えば安く済ませられるから予算内で多くを購入できるのに、購入に当たっては、行政が指定した業者から買わなくてはいけないので定価に近い金額で買わざるを得ないという問題でした。

しかし、厚生省(当時)の担当官に「指定業者制度」について質問したところ、厚生省としては「指定業者制度」を採っていないと言明しましたので、仮に行政の側が特定業者からの購入を持ち出したとしても(たまには)厚労省が味方ですから (笑)、この壁は破れるハズです。皆様の地元では「指定業者制度」のようなものが無いことを望むものです。

といった「工夫」が必要だったパソコンの購入が、2001年3月27日付けで、厚労省が各都道府県と政令指定都市の障害福祉課などに対して、パソコンを日常生活用具に含める旨の通達を出しました。

その通達では、肢体不自由者の日常生活用具の中に記されてきたワープロをパソコンに置き換えただけですので、金額的にもワープロの金額がスライドしただけですし、視覚障害者にとってはパソコンは、相変わらず日常生活用具の壁の向こうでした。

でも、小さな一歩でも一歩は一歩。この一歩を足がかりに、どんどんアタックしていきましょう。最初の壁は破ったのです。皆様もパソコンボランティアをするにあたっては、こういった制度の活用に関してもアドバイスやサポートができるよう、アンテナを張っておくことが必要です。

但し、市町村で日常生活用具を担当している部署が通達を理解しているとは限りません(実際、○○○市の障害者福祉担当窓口はパソコンが日常生活用具に追加されたことを知らず申請自体を断りました)。アドバイスの際には「窓口が制度を知らずに断るかもしれないが、あっさり引き下がらずキチンと調べてもらうよう」強調しておきましょう。

日常生活用具はパソコンの本体だけが対象ですが、重度の視覚障害者や上肢障害者に対してパソコンの周辺機器やソフトの購入費用の一部を助成する「障害者情報バリアフリー化支援事業」もあります。全都道府県と政令指定都市で行なわれています。

なお、ある製品を東京都では対象品目として認め、大阪府では認めないといったバラツキも発生しておりますので、「認められなかった場合でも、納得のいくきちんとした説明を求めるよう」アドバイスをしておきましょう。また、その年度には認められなくても、何度も何度も要望し続ける中で、制度に風穴を開けてきたのがこれまでの歴史ですので、認められるまで何年でも要望し続けることが必要です。

…だったのですが、「日常生活用具」への適用も「障害者情報バリアフリー化支援事業」も、「障害者自立支援法」のスタートで振り出しに戻り、判断は各市町村それぞれで…となりました。各市町村も、どういった製品を適用させるのか、どういった制度とするのか、模索している状態が、いまだに続いています。

視覚障害者に対してソフトだけでなくパソコン本体の適用を認めた自治体も出てきましたし、ほとんどの自治体では本人1割負担のところを、本人負担0の自治体(自治体が全額負担)も出てきました。模索している今が、ある意味「狙い目」かもしれません。

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