黒澤明監督の「夢」という映画の中に、お雛様が登場する「桃畑」という作品があります。ストーリーはまったく思い出せないのですが、桃畑にお雛様がズラリと並んで踊るシーンは強く印象に残っています。
祖母の家には昔ながらの大きな雛飾りがありました。美しく、けれど近寄りがたい、むやみに触ってはいけないものでした。薄暗い部屋の中で白い肌が光って見えました。
小学校2年の時「私のお雛様」を持ちました。木目込み人形で小さいけれど、右大臣、左大臣、3人の「仕丁(じちょう)」もいました。娘が大きくなってからは、あまり飾ることもなくなってしまって…お雛様たちが怒っているかな…?
毎年、今頃の季節になると、デパートの色々な売り場で「お雛様」に出会います。7段飾りの豪華なものから、陶器やちりめんやガラス製の小さなお雛様、グリーティングカードのお雛様まで。ながめているだけで、優しい気持ちになり、「もうすぐ春だな」と思います。