百人一首目次

21年6月19日 更新

01 秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露に濡れつつ 天智天皇
02 春過ぎて夏来にけらし白妙の衣干すてふ天の香具山 持統天皇
03 あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む 柿本人麿
04 田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ 山辺赤人
05 奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき 猿丸大夫
06 鵲の渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける 中納言家持
07 天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも 安倍仲麿
08 わが庵は都の辰巳しかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり 喜撰法師
09 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に 小野小町
10 これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関 蝉丸
11 わたのはら八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣り舟 参議篁
12 天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ乙女の姿しばしとどめむ 僧正遍昭
13 筑波嶺の峰より落つるみなの川恋ぞ積もりて淵となりぬる 陽成院
14 陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに 河原左大臣
15 君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ 光孝天皇
16 立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む 中納言行平
17 ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くぐるとは 在原業平朝臣
18 住の江の岸に寄る波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ 藤原敏行朝臣
19 難波潟短き蘆の節の間も逢はでこの世を過ぐしてよとや 伊勢
20 わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ 元良親王
21 今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな 素性法師
22 吹くからに秋の草木のしほるればむべ山風をあらしといふらむ 文屋康秀
23 月見れば千々にものこそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど 大江千里
24 このたびは幣も取りあへず手向山紅葉の錦神のまにまに 管家
25 名にし負はば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな 三条右大臣
26 小倉山峰の紅葉ば心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ 貞信公
27 みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ 中納言兼輔
28 山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草もかれぬと思へば 源宗于朝臣
29 心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花 凡河内躬恒
30 有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし 壬生忠岑
31 朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪 坂上是則
32 山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり 春道列樹
33 ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ 紀友則
34 誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに 藤原興風
35 人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香に匂ひける 紀貫之
36 夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ 清原深養父
37 白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける 文屋朝康
38 忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな 右近
39 浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき 参議等
40 忍ぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで 平兼盛
41 恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか 壬生忠見
42 契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは 清原元輔
43 逢い見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり 権中納言敦忠
44 逢ふことのたえてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし 中納言朝忠
45 あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな 謙徳公
46 由良の門を渡る船人梶を絶え行方も知らぬ恋の道かな 曾禰好忠
47 八重葎茂れる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり 恵慶法師
48 風をいたみ岩打つ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな 源重之
49 御垣守衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつものをこそ思へ 大中臣能宣朝臣
50 君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな 藤原義孝
51 かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを 藤原実方朝臣
52 明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな 藤原道信朝臣
53 嘆きつつひとり寝る夜のあくる間はいかに久しきものとかは知る 右大将道綱母
54 忘れじの行く末まではかたければ今日をかぎりの命ともがな 儀同三司母
55 滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ 大納言公任
56 あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな 和泉式部
57 めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に雲隠れにし夜半の月かな 紫式部
58 有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする 大弐三位
59 やすらはで寝なましものをさ夜ふけてかたぶくまでの月を見しかな 赤染衛門
60 大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天の橋立 小式部内侍
61 いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな 伊勢大輔
62 夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ 清少納言
63 今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならでいふよしもがな 左京大夫道雅
64 朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木 権中納言定頼
65 恨みわび干さぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ 相模
66 もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし 前大僧正行尊
67 春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなくたたむ名こそ惜しけれ 周防内侍
68 心にもあらで憂き世に長らへば恋しかるべき夜半の月かな 三条院
69 嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり 能因法師
70 さびしさに宿を立ち出でてながむればいづくも同じ秋の夕暮れ 良暹法師
71 夕されば門田の稲葉おとづれて蘆のまろやに秋風ぞ吹く 大納言経信
72 音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ 祐子内親王家紀伊
73 高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞立たずもあらなむ 前権中納言匡房
74 憂かりける人をはつせの山おろしよはげしかれとは祈らぬものを 源俊頼朝臣
75 契りおきしさせもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり 藤原基俊
76 わたの原漕ぎ出でて見ればひさかたの雲居にまがふ沖つ白波 藤原忠道
77 瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ 崇徳院
78 淡路島通ふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚めぬ須磨の関守 源兼昌
79 秋風にたなびく雲のたえ間より漏れ出づる月の影のさやけさ 左京大夫顕輔
80 ながからむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ 待賢門院堀河
81 ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる 後徳大寺左大臣
82 思ひわびさても命はあるものを憂きに堪へぬは涙なりけり 道因法師
83 世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる 皇太后宮大夫俊成
84 ながからむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ 待賢門院堀河
85 夜もすがらもの思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり 俊恵法師
86 嘆けとて月やはものを思はするかこち顔なるわが涙かな 西行法師
87 村雨の露もまだ干ぬまきの葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ 寂蓮法師
88 難波江の蘆のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき 皇嘉門院別当
89 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする 式子内親王
90 見せばやな雄島の海人の袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず 殷富門院大輔
91 きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む 藤原良経
92 わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし 二条院讃岐
93 世の中は常にもがもな渚漕ぐ海人の小舟の綱手かなしも 鎌倉右大臣
94 み吉野の山の秋風さ夜更けてふるさと寒く衣うつなり 参議雅経
95 おほけなく憂き世の民におほふかなわが立つ杣にすみ染めの袖 前大僧正慈円
96 花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり 入道前太政大臣
97 来ぬ人をまつ帆の浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ 権中納言定家
98 風そよぐ楢の小川の夕暮はみそぎぞ夏のしるしなりける 従二位家隆
99 人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は 後鳥羽院
100 ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり 順徳院